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レビュー:ブルー・オーシャン・シフト W・チャン・キム他著

今や定番のブルー・オーシャン戦略の新刊である。シフトという題目のとおり、ブルー・オーシャン戦略を現場に落とし込んでいくためのツールの活用、ハウツー版といっていいかもしれない。ブルー・オーシャンの理論そのものを押さえるなら前著のほうが体系が見えやすいだろう。

 私的には、ブルー・オーシャンの定期的なおさらい、復習の意味で読んだが、そういう意味ではこれまでの論の踏襲であって、特段新しいことが述べられているわけではない。目的に合わせて選択するといいかもしれない。

ブルー・オーシャン戦略の要旨は、前提を正しく疑えるか、そして、力点のメリハリをつけ、きちんと削るべきものを削れるかに尽きる。いわゆる一般的競争のイメージでは、同類的な群集の中で無駄にもがいているに過ぎないし、差別化か低コストかでは、旧来の発想の枠から抜け出ることは難しい。

お行儀よく、業界のルールに従っているだけでは、過当競争は免れないし、結果じり貧に甘んじざるを得ない。ルールの従属者になるか、先導者になるか、これこそが本当の選択だ。

枠組みが変われば、当然求められるものも変わる。あたり前すぎてもはや疑うことすらないものほど、実は不要なものかもしれない。付加価値は足すものとの思い込みがあるが、削減することが付加価値になるという可能性も同様にある。

何でもありが最善なのではなく、何を増やし、何をなくすかの適切なハンドリングが独自の競争の舞台をつくり上げる。何でもあるというのはいわば無思考だ。余計なお世話といってもいい。相手の必要に沿うということは、要不要の凸凹にフィットすることだ。

そもそも凸凹をフラットにならすのが目的なのではない。凸凹をそれとして受け入れ、なおかつより明快な凸凹としてそれを提示し返すこと。顧客が自分のことすべてをわかっているわけではない以上、良い提案とは顧客の見通しをクリアにしてくれる働きを持っていることが期待される。