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思索のヒント、ブックレビューなどを中心に

レビュー:内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力 スーザン・ケイン を読んで

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個人的に自己啓発本に興味はないし、取り上げるほどの意味もないと思っている。

だから、これをそういう本として読んではいない。むしろ、私たちがあたり前のように前提としている人間像に疑問を呈する視座として理解するといいかもしれない。

 

では、あたり前というのはどんな人間像か。

戦後の日本では、アメリカ礼賛一辺倒できたこともあって、アメリカ流に評価される、主張のできる、強いリーダーシップこそがすべてといった風潮がある。

確かに、そういった押しの強い、表舞台にさっそうと登場するようなアグレッシブなスター人材は、わかりやすいし、メディア等でも取り上げられやすい。いわゆる外向的な、ポジティブ思考の人間だ。

そういった人は、成果を上げていることと結びつきやすいし、わかりやすいロールモデルとしてもてはやされる。だからみんなそういう積極的な人材を目指しましょうという話になりがちなのだろう。

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レビュー 他者と働く 「わかりあえなさ」から始める組織論 を読んで

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世の中の問題には、本書にあるように、「技術的問題」と、「適応課題」と、二種類ある。この部分は重要だ。たいていの人はものごとを白黒付く、正解のあるものとみなす。それは技術的問題として解けるということを含意する。

一方で、正解を一つに決められない問題というのも存在する。それが適応課題だ。ものごとには多様な解釈が存在するので、そこに関与する立場が変われば、当然「正解」も変わってくる。

つまり、唯一無二の正解が単純に導けるわけではなく、そこに関与するステークホルダーそれぞれにとっての正解がいくつも存在しうる状況だ。

むしろ世の中の成り立ちを考えれば、前者のケースのほうがまれで、後者がその中心を占めるといってもいいのかもしれない。しかし、私たちはあたかも前者ですべての問題が解けるかのように学んできたし、そうであるかのごとく振る舞いがちだ。

このギャップが社会や組織、人間関係における軋轢を生んでいる元凶といえる。

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レビュー ソーシャルメディアの生態系 を読んで

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私たちは西洋を起源とする人間中心の世界認識になじんでいるので、それから脱するのは非常に難しい。

社会も個々人の人間を活かす媒体としての社会であって、逆ではないと思い込んでいる。そうした思考はあまりに強固で当然視されるため、そもそもそれに疑問を持つことすらないだろう。

 

ここで取り上げられる「ソーシャルメディアの生態系」とは、そうした思考を逆転するすることを求められる。この気づきは重要だ。

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レビュー カルチャロミクス 文化をビッグデータで計測する を読んで

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われわれの「文化」を象徴するものはいったい何か。

いくつかの候補が挙がるだろうが、「言語」もその特徴的な要素の一つだといっていいだろう。

人間が言語を話す動物である以上、その行動や振る舞いが言語化され、文字として記録される。もちろん瞬間瞬間を生きる個々人にとっては、とくに気に留めることもない、生活の流れの一部分にすぎないのだが、それを整理して抽出する、集合的に扱うならば、そこに人の文化活動の片鱗が記録されているはずである。

 

本書では、グーグルが得意とする書籍の全デジタル化の一環として、過去の書籍に掲載されている文字を単語ベースで数え上げることで、単語の使われ方にどういった歴史的変遷が見られるのかをnグラムとして描き出す。

それが人間の文化を計数的に扱う、「カルチャロミクス」の神髄だ。

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ブックレビュー アナログの逆襲 デイビッド・サックス著 を読んで

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アナログは死んだのか、それは無用の長物に成り下がったのか。

本書ではアナログの復活を通じて、アナログでなければならない必然性に光を当てていく。

 

取り上げられるものは、レコード、紙、フィルム、ボードゲーム、プリント、リアル店舗と多岐にわたり、また広く仕事や教育までをも網羅する。さらにデジタルの先端企業こそがアナログを取り入れていると説く。

 

要するに、アナログ対デジタルという、二律背反の思考そのものが間違っているのかもしれない。

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