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思索のヒント、ブックレビューなどを中心に

BOOK、本、レビュー、感想、書評

レビュー:内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力 スーザン・ケイン を読んで

個人的に自己啓発本に興味はないし、取り上げるほどの意味もないと思っている。 だから、これをそういう本として読んではいない。むしろ、私たちがあたり前のように前提としている人間像に疑問を呈する視座として理解するといいかもしれない。 では、あたり…

レビュー 他者と働く 「わかりあえなさ」から始める組織論 を読んで

世の中の問題には、本書にあるように、「技術的問題」と、「適応課題」と、二種類ある。この部分は重要だ。たいていの人はものごとを白黒付く、正解のあるものとみなす。それは技術的問題として解けるということを含意する。 一方で、正解を一つに決められな…

レビュー ソーシャルメディアの生態系 を読んで

私たちは西洋を起源とする人間中心の世界認識になじんでいるので、それから脱するのは非常に難しい。 社会も個々人の人間を活かす媒体としての社会であって、逆ではないと思い込んでいる。そうした思考はあまりに強固で当然視されるため、そもそもそれに疑問…

レビュー カルチャロミクス 文化をビッグデータで計測する を読んで

われわれの「文化」を象徴するものはいったい何か。 いくつかの候補が挙がるだろうが、「言語」もその特徴的な要素の一つだといっていいだろう。 人間が言語を話す動物である以上、その行動や振る舞いが言語化され、文字として記録される。もちろん瞬間瞬間…

ブックレビュー アナログの逆襲 デイビッド・サックス著 を読んで

アナログは死んだのか、それは無用の長物に成り下がったのか。 本書ではアナログの復活を通じて、アナログでなければならない必然性に光を当てていく。 取り上げられるものは、レコード、紙、フィルム、ボードゲーム、プリント、リアル店舗と多岐にわたり、…

レビュー:多数決を疑う 社会的選択理論とは何か を読んで

わたしたちは、多数決をあたり前だと思っている。 民主主義とは、わたしたちの意思の反映であって、そのツールが多数決なのだと。 しかし、その一方で、多数決を無為だと思っているのも事実だ。 結局は、個々の意思など大して意味はないのだと。 たしかに、…

レビュー:プレイ・マターズ 遊び心の哲学 を読んで

遊びとは何か? そもそも、遊びとは一段低くみられていることもあって、それほど真剣に考えられることもないのだろう。 しかし、遊びには別の意味もある。たとえば、物と物との干渉を和らげるためには、一種のあそびが求められる。あそびがあるからこそ、う…

レビュー 時間は存在しない カルロ・ロヴェッリ著 を読んで

「時間は存在しない」衝撃的な題名だ。 我々はあたり前のように時間の中を生きていると思っているし、時計を使って時間をきっちりと計っている。では何ゆえに時間は存在しないのか。 要するに、われわれがこれまであたり前として捉えてきたような意味での「…

レビュー:技術の完成 フリードリヒ・ゲオルク・ユンガー著 を読んで

タイトルの通り、技術を主題に据えた書籍である。 では、技術の完成とは何か。それが意味するところは。

レビュー:福岡伸一、西田哲学を読む 生命をめぐる思索の旅 池田善昭、福岡伸一著

わたしたちは、現代的な思考作法にならされてしまっているので、ロジカルに考えることは善きことだとして何ら疑問に感じない。 しかし、そのロジカルこそが、大事なことを覆い隠してしまう盲点だとしたらどうだろう? 確かに論理的に物事を考えることで、状…

アルゴリズムはどれほど人を支配しているのか? を読んで

近年の情報最適化の波から人工知能やシンギュラリティの議論の中で、AI(技術)対人間という構図が良く語られれているが、実際のところはよくわかっていないのが現実ではないのか。 フィルターバブルをはじめとして、知らず知らずのうちに、自分たちが情報に…

レビュー:ザ・レトリック 人生の武器としての伝える技術 ジェイ・ハインリックス著

時制といった場合、英語の文法としてそれを意識した経験はあっても、日常の話法として、それが時制+αの意図を表現しうるとはなかなか理解していないのが実情だろう。本書で押さえるべきポイントはまさにその「時制」にあるといっていい。

ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来 ユヴァル・ノア・ハラリ を読んで

サピエンス全史のユヴァル・ノア・ハラリの続編のようなものといっていいだろうか。 サピエンス全史がこれまでを取り上げていたのに対し、ホモ・デウスでは人間のこれからを描き出す。題名にもある「ホモ・デウス」とは何なのか。 サピエンスが賢いというの…

#REPUBLIC インターネットは民主主義に何をもたらすのか を読んで

自由と民主主義にとって、インターネットは善なのか、悪なのか? まあ、よくある議論ではある。技術信奉派は無条件にそれを評価するだろうし、技術懐疑派はそれに待ったをかける。 一般に、インターネットは少数意見、ロングテールを拾いやすくなるといわれ…

科学と非科学 その正体を探る を読んで

科学で最も避けるべきは何だろうか。それは科学を無前提に崇め奉る、いわゆる「科学教」に陥ることだろう。 科学を扱うということは、それを「正しく」扱うということであって、科学それ自体が「正しい」と妄信することではない。 こうした謙虚な姿勢が求め…

予測マシンの世紀 AIが駆動する新たな経済 を読んで

人工知能(AI)は今、まさにホットなテーマだ。 しかし今だその道筋はわかっているようでわからない部分も多い。要するに過去からの類推で読めるものではなく、全くの新しい潮流だからだ。 まさにこの点が予測マシンという意味でのAIとも大きく関係している…

ずる 嘘とごまかしの行動経済学 ダン・アリエリー 著 を読んで

わたしたちは良い奴なのか、悪い奴なのか 本書の回答は、私たちは基本、良い奴だと思われたい。その限りにおいてちょっとした悪いことには目をつむる存在だということらしい。 つまり、100%良い奴とは言えないし、かといって徹底的に悪い奴ということでもな…

ライフ・オブ・ラインズ 線の生態人類学 ティム・インゴルド を読んで

ティム・インゴルド著、ラインズ 線の文化史の続編である。前著はなかなか面白いと思ったが、本書はその延長的位置づけなので、それほど新しい感じはなかった。全体を俯瞰的に捉える意味では、まずは前著にあたるのがいいだろう。 敢えて本書で注目するなら…

NEW POWER これからの世界の「新しい力」を手に入れろ ジェレミー・ハイマンズ/ヘンリー・ティムズ を読んで

まず初めにパワー(権力)といったとき、私たちは暗黙の裡に、ピラミッド型のヒエラルキーに沿った権力を行使する側と権力を行使される側との対比による構図をイメージしてしまうだろう。それをイメージしているという認識すらないままに。 つまりパワーとは…

矛盾社会序説 その「自由」が世界を縛る 御田寺圭 著 を読んで

世の中は矛盾にあふれている。本書で言われる「かわいそうランキング」とは象徴的な表現だ。みんながかわいそうと思ってくれる(=ニュースバリューがある)ものにはスポットがあてらえる一方で、それ以外は取り上げらえることもなく、その存在すら無きもの…

レビュー:まなざしのデザイン <世界の見方>を変える方法 ハナムラチカヒロ著

われわれはとかくデザインを対象物の属性として理解している。一方で、人間の認知という仕組みを厳密に考慮すれば、たとえ同じ現象や対象物でも、良いという人もいれば悪いという人もいる。このように人によって受ける印象や捉え方が変わるのがむしろ人間の…

レビュー:野性の知能 ルイーズ・バレット著 小松淳子訳

われわれは知性というものを脳内の蓄積量のようなものと認識しがちだ。しかし、コンピューターのようにすべてを情報として蓄積しようとするのはけっしてスマートな方法ではない。 動物の本性としての行動観察から、実はすべてを知っている必要はないことが明…

レビュー:企業変革力 ジョン・P・コッター著 梅津祐良訳 

変わらなくてはならない、しかし簡単には変われない、という企業の現実を詳述したもの。特段目新しいわけではなく、当然と言えば当然のはなしで、実感として多くの組織人に共感が得られる内容ではある。 個人的に関心の高いポイントは二点、リーダーシップの…

レビュー:世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 山口周 著

本書は現代における経営の欠陥は美意識の欠如に起因するものとして、ビジネスにおけるアートの意味合いを説く。 時代の転換点にあって、20世紀型の成長モデルと連動した分析的、科学的アプローチには限界が見えてきた。いわゆる「正解」を追い求めるロジック…

レビュー:なぜ今、私たちは未来をこれほど不安に感じるのか? 松村嘉浩著

最近はやりの小説仕立て、対話形式で読める経済書といっていいだろう。その意味では読みやすいので、早ければ1日、2日で読み終えられる分量である。 われわれの不安の元凶は何か、どこにあるのかが本書の主題だ。 端的にいえば、これまでの資本主義経済シス…

レビュー:マネタイズ戦略 顧客価値提案にイノベーションを起こす新しい発想 川上昌直著

とかく日本人はマネタイズを下賤なものと考えがちであるので、どうしてもそうした発想は前面に出てくることがない。だから、良いものさえ作れば、良いサービスさえすれば、おのずと結果はついてくるといった美徳がもてはやされる傾向にあるのだろう。 だから…

レビュー:変化の原理 問題の形成と解決 ポール・ワツラウィック他著

変化の必要性はしばしば問われているものの、実際、変化とは捉えどころがない部分もある。本書は心理学的臨床から敷衍して、変化の本質に迫ろうとするアプローチである。 大きな論点としては、変化といっても単一ではないということにある。 わかりにくいか…

レビュー:小売再生 リアル店舗はメディアになる ダグ・スティーブンス著

小売りは物を売るのではなく、体験を売るべきだ。今やよく聞かれる論調であり、本書の主旨もその点で共通している。 小売というモデルが、古き良き20世紀的な、生活の欠乏をモノで満たすことが第一義であった時代の名残だとすれば、もはや環境が小売というス…

レビュー:デザインが日本を変える 日本人の美意識を取り戻す 前田育男著

マツダのデザイナーによる、デザイン畑、メーカー畑からのデザイン論である。マツダの「魂動デザイン」を通じて、いかにデザインを全社的に敷衍し、息づかせるかという意味で、組織論でもあり、人材活用論でもある。

レビュー:人体 600万年史 科学が明かす進化・健康・疾病 ダニエル・E・リーバーマン著

人類の歴史という視点からすると、われわれの日常の認識はいささか短絡といってもやぶさかではないだろう。 最適といったとき、私たちはどうしても自分の視点で、自分中心に環境と最もフィットした理想的状態を思い描きがちである。もちろん、現時点で取り急…