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レビュー:変化の原理 問題の形成と解決 ポール・ワツラウィック他著

変化の必要性はしばしば問われているものの、実際、変化とは捉えどころがない部分もある。本書は心理学的臨床から敷衍して、変化の本質に迫ろうとするアプローチである。

大きな論点としては、変化といっても単一ではないということにある。

わかりにくいかもしれないが、変化には、枠組みの中での変化と、枠組み自体を超える(ないしは枠組みそのものを組み替える)変化の二つがある。それを第一次変化と第二次変化として分別するのが出発点だ。

一般には前者の変化を変化だと見なしていることが多い。つまり、前提となる大枠には一切手を付けることなしに、要素の変化を追いかけるという姿勢だ。もちろんこれも変化ではあるものの、枠がダブルバインドのように機能するため、変化させようとしても、結果的には変化できないということがまま起こりうる。

逆に、枠組みを見直すとの意味での変化では、そもそも前提が取り払われるので、これまで変化しなければならないと思っていた土台自体が霧散してしまうことが多い。ゆえに、現前の事態を変化をさせるというよりも、変化の必要性そのものが昇華されてしまう結果、もともとの変化への要請が解消することになる。いわば変化せずとも変化するといった解決アプローチになるかもしれない。

両者の違いは言い換えるなら、ゲームとも捉えられる。特定のゲーム内での変容をめざすものなのか、それともゲーム自体を異なる次元のものに変えてしまうのか。

現状延長的発想は前者にあたるし、論理階層をシフトチェンジし、一段上の次元からゲームのロジックそのものを超越する発想が後者にあたるだろう。

前者では、異質なもの同士、力が拮抗し、同列にぶつかり合うことで、終わりなき消耗戦に突入してしまう事態が避けられない。一方で後者は、面と向かってぶつかり合うことなしに、意図的なずらしを通じて変化を導くことになる。相手への直接抵抗でなしに、相手の力をうまく受け流すことで引き落とすようなイメージだ。

結果的に変化すればいいのであって、直接的に対抗、制圧するという強制変化が唯一の解ではないことがポイントだ。どうしても変化というと、現前のそればかりに注視して、力ずくに解決したいとの近視眼が避けられない。しかし、そもそもの前提、仕組みの不全に気づくことができれば、変化に対処することなしに、変化自体を解消することも不可能ではないとの認識ができるかどうかだ。

変化は単一の現象ではない。一次変化と二次変化の違いを見極められれば、現実への対峙にあたって、異なるオプションが選択できるようになるだろう。