something eureka

思索のヒント、ブックレビューなどを中心に

2019-01-01から1年間の記事一覧

レビュー ソーシャルメディアの生態系 を読んで

私たちは西洋を起源とする人間中心の世界認識になじんでいるので、それから脱するのは非常に難しい。 社会も個々人の人間を活かす媒体としての社会であって、逆ではないと思い込んでいる。そうした思考はあまりに強固で当然視されるため、そもそもそれに疑問…

レビュー カルチャロミクス 文化をビッグデータで計測する を読んで

われわれの「文化」を象徴するものはいったい何か。 いくつかの候補が挙がるだろうが、「言語」もその特徴的な要素の一つだといっていいだろう。 人間が言語を話す動物である以上、その行動や振る舞いが言語化され、文字として記録される。もちろん瞬間瞬間…

ブックレビュー アナログの逆襲 デイビッド・サックス著 を読んで

アナログは死んだのか、それは無用の長物に成り下がったのか。 本書ではアナログの復活を通じて、アナログでなければならない必然性に光を当てていく。 取り上げられるものは、レコード、紙、フィルム、ボードゲーム、プリント、リアル店舗と多岐にわたり、…

レビュー:多数決を疑う 社会的選択理論とは何か を読んで

わたしたちは、多数決をあたり前だと思っている。 民主主義とは、わたしたちの意思の反映であって、そのツールが多数決なのだと。 しかし、その一方で、多数決を無為だと思っているのも事実だ。 結局は、個々の意思など大して意味はないのだと。 たしかに、…

レビュー:プレイ・マターズ 遊び心の哲学 を読んで

遊びとは何か? そもそも、遊びとは一段低くみられていることもあって、それほど真剣に考えられることもないのだろう。 しかし、遊びには別の意味もある。たとえば、物と物との干渉を和らげるためには、一種のあそびが求められる。あそびがあるからこそ、う…

人間を含めた効率と人間に資する効率 効率化のふたつの視点

効率とは善なのか? また、人間とは多様なものか、それとも不確実なものか? この辺の見極めを誤ると、大筋を違えることになるだろう。 人間とは、多様であり、同時に不確実だ。つまり、優位性と劣位性は表裏一体のものであり、これを切り離して考えることは…

レビュー 時間は存在しない カルロ・ロヴェッリ著 を読んで

「時間は存在しない」衝撃的な題名だ。 我々はあたり前のように時間の中を生きていると思っているし、時計を使って時間をきっちりと計っている。では何ゆえに時間は存在しないのか。 要するに、われわれがこれまであたり前として捉えてきたような意味での「…

レビュー:技術の完成 フリードリヒ・ゲオルク・ユンガー著 を読んで

タイトルの通り、技術を主題に据えた書籍である。 では、技術の完成とは何か。それが意味するところは。

レビュー:福岡伸一、西田哲学を読む 生命をめぐる思索の旅 池田善昭、福岡伸一著

わたしたちは、現代的な思考作法にならされてしまっているので、ロジカルに考えることは善きことだとして何ら疑問に感じない。 しかし、そのロジカルこそが、大事なことを覆い隠してしまう盲点だとしたらどうだろう? 確かに論理的に物事を考えることで、状…

アルゴリズムはどれほど人を支配しているのか? を読んで

近年の情報最適化の波から人工知能やシンギュラリティの議論の中で、AI(技術)対人間という構図が良く語られれているが、実際のところはよくわかっていないのが現実ではないのか。 フィルターバブルをはじめとして、知らず知らずのうちに、自分たちが情報に…

レビュー:ザ・レトリック 人生の武器としての伝える技術 ジェイ・ハインリックス著

時制といった場合、英語の文法としてそれを意識した経験はあっても、日常の話法として、それが時制+αの意図を表現しうるとはなかなか理解していないのが実情だろう。本書で押さえるべきポイントはまさにその「時制」にあるといっていい。

ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来 ユヴァル・ノア・ハラリ を読んで

サピエンス全史のユヴァル・ノア・ハラリの続編のようなものといっていいだろうか。 サピエンス全史がこれまでを取り上げていたのに対し、ホモ・デウスでは人間のこれからを描き出す。題名にもある「ホモ・デウス」とは何なのか。 サピエンスが賢いというの…

#REPUBLIC インターネットは民主主義に何をもたらすのか を読んで

自由と民主主義にとって、インターネットは善なのか、悪なのか? まあ、よくある議論ではある。技術信奉派は無条件にそれを評価するだろうし、技術懐疑派はそれに待ったをかける。 一般に、インターネットは少数意見、ロングテールを拾いやすくなるといわれ…

科学と非科学 その正体を探る を読んで

科学で最も避けるべきは何だろうか。それは科学を無前提に崇め奉る、いわゆる「科学教」に陥ることだろう。 科学を扱うということは、それを「正しく」扱うということであって、科学それ自体が「正しい」と妄信することではない。 こうした謙虚な姿勢が求め…

予測マシンの世紀 AIが駆動する新たな経済 を読んで

人工知能(AI)は今、まさにホットなテーマだ。 しかし今だその道筋はわかっているようでわからない部分も多い。要するに過去からの類推で読めるものではなく、全くの新しい潮流だからだ。 まさにこの点が予測マシンという意味でのAIとも大きく関係している…

ずる 嘘とごまかしの行動経済学 ダン・アリエリー 著 を読んで

わたしたちは良い奴なのか、悪い奴なのか 本書の回答は、私たちは基本、良い奴だと思われたい。その限りにおいてちょっとした悪いことには目をつむる存在だということらしい。 つまり、100%良い奴とは言えないし、かといって徹底的に悪い奴ということでもな…

ライフ・オブ・ラインズ 線の生態人類学 ティム・インゴルド を読んで

ティム・インゴルド著、ラインズ 線の文化史の続編である。前著はなかなか面白いと思ったが、本書はその延長的位置づけなので、それほど新しい感じはなかった。全体を俯瞰的に捉える意味では、まずは前著にあたるのがいいだろう。 敢えて本書で注目するなら…

NEW POWER これからの世界の「新しい力」を手に入れろ ジェレミー・ハイマンズ/ヘンリー・ティムズ を読んで

まず初めにパワー(権力)といったとき、私たちは暗黙の裡に、ピラミッド型のヒエラルキーに沿った権力を行使する側と権力を行使される側との対比による構図をイメージしてしまうだろう。それをイメージしているという認識すらないままに。 つまりパワーとは…

矛盾社会序説 その「自由」が世界を縛る 御田寺圭 著 を読んで

世の中は矛盾にあふれている。本書で言われる「かわいそうランキング」とは象徴的な表現だ。みんながかわいそうと思ってくれる(=ニュースバリューがある)ものにはスポットがあてらえる一方で、それ以外は取り上げらえることもなく、その存在すら無きもの…

レビュー:まなざしのデザイン <世界の見方>を変える方法 ハナムラチカヒロ著

われわれはとかくデザインを対象物の属性として理解している。一方で、人間の認知という仕組みを厳密に考慮すれば、たとえ同じ現象や対象物でも、良いという人もいれば悪いという人もいる。このように人によって受ける印象や捉え方が変わるのがむしろ人間の…

レビュー:野性の知能 ルイーズ・バレット著 小松淳子訳

われわれは知性というものを脳内の蓄積量のようなものと認識しがちだ。しかし、コンピューターのようにすべてを情報として蓄積しようとするのはけっしてスマートな方法ではない。 動物の本性としての行動観察から、実はすべてを知っている必要はないことが明…

レビュー:企業変革力 ジョン・P・コッター著 梅津祐良訳 

変わらなくてはならない、しかし簡単には変われない、という企業の現実を詳述したもの。特段目新しいわけではなく、当然と言えば当然のはなしで、実感として多くの組織人に共感が得られる内容ではある。 個人的に関心の高いポイントは二点、リーダーシップの…