個人的に自己啓発本に興味はないし、取り上げるほどの意味もないと思っている。 だから、これをそういう本として読んではいない。むしろ、私たちがあたり前のように前提としている人間像に疑問を呈する視座として理解するといいかもしれない。 では、あたり…
世の中の問題には、本書にあるように、「技術的問題」と、「適応課題」と、二種類ある。この部分は重要だ。たいていの人はものごとを白黒付く、正解のあるものとみなす。それは技術的問題として解けるということを含意する。 一方で、正解を一つに決められな…
私たちは西洋を起源とする人間中心の世界認識になじんでいるので、それから脱するのは非常に難しい。 社会も個々人の人間を活かす媒体としての社会であって、逆ではないと思い込んでいる。そうした思考はあまりに強固で当然視されるため、そもそもそれに疑問…
われわれの「文化」を象徴するものはいったい何か。 いくつかの候補が挙がるだろうが、「言語」もその特徴的な要素の一つだといっていいだろう。 人間が言語を話す動物である以上、その行動や振る舞いが言語化され、文字として記録される。もちろん瞬間瞬間…
アナログは死んだのか、それは無用の長物に成り下がったのか。 本書ではアナログの復活を通じて、アナログでなければならない必然性に光を当てていく。 取り上げられるものは、レコード、紙、フィルム、ボードゲーム、プリント、リアル店舗と多岐にわたり、…
わたしたちは、多数決をあたり前だと思っている。 民主主義とは、わたしたちの意思の反映であって、そのツールが多数決なのだと。 しかし、その一方で、多数決を無為だと思っているのも事実だ。 結局は、個々の意思など大して意味はないのだと。 たしかに、…
遊びとは何か? そもそも、遊びとは一段低くみられていることもあって、それほど真剣に考えられることもないのだろう。 しかし、遊びには別の意味もある。たとえば、物と物との干渉を和らげるためには、一種のあそびが求められる。あそびがあるからこそ、う…
効率とは善なのか? また、人間とは多様なものか、それとも不確実なものか? この辺の見極めを誤ると、大筋を違えることになるだろう。 人間とは、多様であり、同時に不確実だ。つまり、優位性と劣位性は表裏一体のものであり、これを切り離して考えることは…
「時間は存在しない」衝撃的な題名だ。 我々はあたり前のように時間の中を生きていると思っているし、時計を使って時間をきっちりと計っている。では何ゆえに時間は存在しないのか。 要するに、われわれがこれまであたり前として捉えてきたような意味での「…
タイトルの通り、技術を主題に据えた書籍である。 では、技術の完成とは何か。それが意味するところは。
わたしたちは、現代的な思考作法にならされてしまっているので、ロジカルに考えることは善きことだとして何ら疑問に感じない。 しかし、そのロジカルこそが、大事なことを覆い隠してしまう盲点だとしたらどうだろう? 確かに論理的に物事を考えることで、状…
近年の情報最適化の波から人工知能やシンギュラリティの議論の中で、AI(技術)対人間という構図が良く語られれているが、実際のところはよくわかっていないのが現実ではないのか。 フィルターバブルをはじめとして、知らず知らずのうちに、自分たちが情報に…
時制といった場合、英語の文法としてそれを意識した経験はあっても、日常の話法として、それが時制+αの意図を表現しうるとはなかなか理解していないのが実情だろう。本書で押さえるべきポイントはまさにその「時制」にあるといっていい。
サピエンス全史のユヴァル・ノア・ハラリの続編のようなものといっていいだろうか。 サピエンス全史がこれまでを取り上げていたのに対し、ホモ・デウスでは人間のこれからを描き出す。題名にもある「ホモ・デウス」とは何なのか。 サピエンスが賢いというの…
自由と民主主義にとって、インターネットは善なのか、悪なのか? まあ、よくある議論ではある。技術信奉派は無条件にそれを評価するだろうし、技術懐疑派はそれに待ったをかける。 一般に、インターネットは少数意見、ロングテールを拾いやすくなるといわれ…
科学で最も避けるべきは何だろうか。それは科学を無前提に崇め奉る、いわゆる「科学教」に陥ることだろう。 科学を扱うということは、それを「正しく」扱うということであって、科学それ自体が「正しい」と妄信することではない。 こうした謙虚な姿勢が求め…
人工知能(AI)は今、まさにホットなテーマだ。 しかし今だその道筋はわかっているようでわからない部分も多い。要するに過去からの類推で読めるものではなく、全くの新しい潮流だからだ。 まさにこの点が予測マシンという意味でのAIとも大きく関係している…
わたしたちは良い奴なのか、悪い奴なのか 本書の回答は、私たちは基本、良い奴だと思われたい。その限りにおいてちょっとした悪いことには目をつむる存在だということらしい。 つまり、100%良い奴とは言えないし、かといって徹底的に悪い奴ということでもな…
ティム・インゴルド著、ラインズ 線の文化史の続編である。前著はなかなか面白いと思ったが、本書はその延長的位置づけなので、それほど新しい感じはなかった。全体を俯瞰的に捉える意味では、まずは前著にあたるのがいいだろう。 敢えて本書で注目するなら…
まず初めにパワー(権力)といったとき、私たちは暗黙の裡に、ピラミッド型のヒエラルキーに沿った権力を行使する側と権力を行使される側との対比による構図をイメージしてしまうだろう。それをイメージしているという認識すらないままに。 つまりパワーとは…
世の中は矛盾にあふれている。本書で言われる「かわいそうランキング」とは象徴的な表現だ。みんながかわいそうと思ってくれる(=ニュースバリューがある)ものにはスポットがあてらえる一方で、それ以外は取り上げらえることもなく、その存在すら無きもの…
われわれはとかくデザインを対象物の属性として理解している。一方で、人間の認知という仕組みを厳密に考慮すれば、たとえ同じ現象や対象物でも、良いという人もいれば悪いという人もいる。このように人によって受ける印象や捉え方が変わるのがむしろ人間の…
われわれは知性というものを脳内の蓄積量のようなものと認識しがちだ。しかし、コンピューターのようにすべてを情報として蓄積しようとするのはけっしてスマートな方法ではない。 動物の本性としての行動観察から、実はすべてを知っている必要はないことが明…
変わらなくてはならない、しかし簡単には変われない、という企業の現実を詳述したもの。特段目新しいわけではなく、当然と言えば当然のはなしで、実感として多くの組織人に共感が得られる内容ではある。 個人的に関心の高いポイントは二点、リーダーシップの…
モノづくりが岐路に立たされたことで、コトづくりがもてはやされる。今や経験消費だ、感動追求だといわれるが、はたしてそれらの見立てに盲点はないのか。
良い本とはどんなものだろうか。 レビューを書いてみると、レビューできる本と、レビューできない本が出てくる。なぜできないのか。それはためになるとかならないとか、内容が濃いとか薄いとかというのとは違う。要するに具体的に書くことが見出せないものが…
本書は現代における経営の欠陥は美意識の欠如に起因するものとして、ビジネスにおけるアートの意味合いを説く。 時代の転換点にあって、20世紀型の成長モデルと連動した分析的、科学的アプローチには限界が見えてきた。いわゆる「正解」を追い求めるロジック…
最近はやりの小説仕立て、対話形式で読める経済書といっていいだろう。その意味では読みやすいので、早ければ1日、2日で読み終えられる分量である。 われわれの不安の元凶は何か、どこにあるのかが本書の主題だ。 端的にいえば、これまでの資本主義経済シス…
とかく日本人はマネタイズを下賤なものと考えがちであるので、どうしてもそうした発想は前面に出てくることがない。だから、良いものさえ作れば、良いサービスさえすれば、おのずと結果はついてくるといった美徳がもてはやされる傾向にあるのだろう。 だから…
変化の必要性はしばしば問われているものの、実際、変化とは捉えどころがない部分もある。本書は心理学的臨床から敷衍して、変化の本質に迫ろうとするアプローチである。 大きな論点としては、変化といっても単一ではないということにある。 わかりにくいか…