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思索のヒント、ブックレビューなどを中心に

レビュー:小売再生 リアル店舗はメディアになる ダグ・スティーブンス著

小売りは物を売るのではなく、体験を売るべきだ。今やよく聞かれる論調であり、本書の主旨もその点で共通している。 小売というモデルが、古き良き20世紀的な、生活の欠乏をモノで満たすことが第一義であった時代の名残だとすれば、もはや環境が小売というス…

レビュー:デザインが日本を変える 日本人の美意識を取り戻す 前田育男著

マツダのデザイナーによる、デザイン畑、メーカー畑からのデザイン論である。マツダの「魂動デザイン」を通じて、いかにデザインを全社的に敷衍し、息づかせるかという意味で、組織論でもあり、人材活用論でもある。

レビュー:人体 600万年史 科学が明かす進化・健康・疾病 ダニエル・E・リーバーマン著

人類の歴史という視点からすると、われわれの日常の認識はいささか短絡といってもやぶさかではないだろう。 最適といったとき、私たちはどうしても自分の視点で、自分中心に環境と最もフィットした理想的状態を思い描きがちである。もちろん、現時点で取り急…

レビュー:ブルー・オーシャン・シフト W・チャン・キム他著

今や定番のブルー・オーシャン戦略の新刊である。シフトという題目のとおり、ブルー・オーシャン戦略を現場に落とし込んでいくためのツールの活用、ハウツー版といっていいかもしれない。ブルー・オーシャンの理論そのものを押さえるなら前著のほうが体系が…

あなたはこれからも従属し続けるのか?

人は一般に押しつけを嫌うものです。もちろん従属がやむを得ないケースもあるでしょうし、ある意味で賢い対処法なのかもしれません。しかし、それは生産的だといえるでしょうか。少なくとも積極的に追及したい方法ではないはずです。 これは指示する側にも同…

知性は持っているかどうかでは測れない

知性の基本は、知識の習得以上に行動力です。 経営課題として、不確実性の増大や変化スピードの速さといったことがいわれますが、これは新たな課題と言えるのでしょうか。実際、いつの時代にも、こうした指摘はなされてきましたし、未来を見通すことの難しさ…

不確実性はネガティブ要因なのか

いつの時代にも、不確実性は忌避すべき問題として取り上げられます。そもそも「不」確実といった時点で、すでにネガティブな意味合いが認められます。それは外界から襲ってくる抗い得ない大きな圧力であり、われわれはその状況を甘んじて受け入れざるをえな…

能動的につながるとは。そもそもつながりって何なのか

つながりとは便利な表現だ。なんだかそれだけで正当性を得た気になる。しかし、つながっていることと、それが実際問題、成果につながるかはイコールではない。 現代は否応なくつながってしまうことも多くなってきている。必ずしもつながりたくてつながってい…

正解はだれが決めるのか、正解は一つだけか。今、基準自体が問われている

どこかのCMではないけれども、ほんとうに欲しいものはプライスレスなのかもしれない。というよりも、プライスという一基準で単純に判断していいのかが問われているともいえる。 なぜ今、判断の基準が揺らぐのか。 これまではそこまでシビアに考えなくても、…

わたしたちが求めてやまない『意味』とは、はたして何なのか?

われわれは自身の行動に意味(意義)を求めますが、それを独立独歩、個人的な問題だと考えるならば、矮小化しすぎかもしれません。 意味というのは、人によって重要性の異なる主観的なものだが、決定的な特質は、それが自分自身よりはもっと多くのものに関係…

自分起点か相手起点か、競争概念の拡張を通じての再認識

マーケット・インか、プロダクト・アウトか。こういうと、とかくいずれか一方、二者択一の議論になりやすい。もちろん、状況を分かりやすく単純化できればそれに越したことはない。しかし実際には、それほど単純に割り切れるものは少ない。

落としどころを求めすぎてかえって見失うという矛盾

「ストーリー」があると言えば、整った帰結で、起承転結をはじめとする筋書きがあり、全体としての一貫性がある、といったイメージを思い浮かべるだろう。 では、論旨を伝えるためのあらゆる形式がストーリーと捉えられるのか。また、ストーリーを外れたとし…

自己認識の難しさはどこにあるのか

「自己」や「自身」という言葉は、至極当たり前のように使われていますが、ほんとうにそうでしょうか。一般的な対象物であれば、それを「それ」として明確に指し示すことができますが、生物としての人間個体以上に、自分をつかさどるものは思いのほか自分の…

日本人は不確実性が苦手?!

多様性がある=不確実である、という意味で、社会環境と不確実性は切り離すことができません。しかし、不確実にはネガティブな印象が付きまとっているのも事実で、われわれは本能的にそれを回避しようとする傾向があります。

共感と異質性の合間を求めて

結局ダイバーシティなどお題目に過ぎないのか。 われわれは自然と受け入れられる者同士で凝り固まる傾向がある。異質さは本質的に脅威なのだ。だとすれば、なぜそれを求めなければならないか。 同質でありたいという願望と、異質さが根源的に無くならないと…

質的生産性と量的生産性は違う

一般に生産性は量目で測られるので、そればかりに囚われると、単に数値化しやすい部分だけをみて意思決定をする事態がまま起こりうる。 例えば、時間スケールは一定の刻みなので、差異は時間内の密度で測られることになるが、詰め込みすぎれば息が詰まる。機…

レビュー:人口減少社会の未来学 内田樹編

オムニバスなので、得心できるものもそうでないものもいろいろだが、そうした点も含め、事実を立体視するのには必要な迂遠なのだろう。 個人的に印象に残った点は、市場化と有縁化は同列に扱えないという点だ。方や経済合理性を前面に、物事を精緻化していく…

「顔」が見える関係の意味するもの

情報に媒介された空間の広がりによって、私たちが関与できる可能性は一段と拡大してくる。容易に「装う」ことで、さまざまな表現が可能になる一方、どこかに芯を設けなければ、確たる立ち位置を示すことは難しくなる。 その意味で、顔が見えるかどうかが、基…

リーダーシップを日本語で言い換えてみると

西洋起源の概念はおおむねカタカナ表記で済まされることが多いですが、その分大づかみなところがあり、わかったような気になって、あいまいにお茶を濁すというデメリットがあります。 リーダーシップやマネジメントもそういったワードの代表格です。仮にリー…

レビュー:プラットフォーム革命 アレックス・モザド、ニコラス・L・ジョンソン著

ものごとのベースとなるしくみが変わったにもかかわらず、私たちの判断基準は古い慣習に囚われたまま抜け出せない。もしくは、囚われていること自体にすら気づけない。こうしたことは決して珍しくない。

ソーシャルが意味するところ

ソーシャルとは、まさにわれわれ自身と社会との積極関与の法則と言えます。 近年のソーシャルツールの普及・流行から、利用者目線の情報を、広く大量に、そして迅速に収集することがソーシャルであるかのように捉えられていますが、果たしてそれで十分といえ…

レビュー:現象学入門 竹田青嗣著

主観と客観の二項対比というロジックは、あまりに深く刷り込まれているため、よほど意識しない限り、その呪縛から逃れることは難しい。もちろん、素朴な自然科学に限っての話ならば、とくに支障はないのだろう。ただし、ことが人間行動にかかる領域の話とな…

レビュー:テクノロジーは貧困を救わない 外山健太郎著

一般に技術が魔法のように問題を解決し、明るい未来をもたらすかのような楽観論が現代の技術信奉として多々見受けられるが、本書ではそんな簡単に物事は進んでいかない、技術導入の失敗例からなぜ技術がつまずくのかを明らかにしていく。

レビュー:これがすべてを変える 資本主義VS気候変動 ナオミ・クライン著

温暖化の問題と言えば、環境領域の問題だとカテゴリー付けされるのが一般的だが、問題の根本を紐解いていくと、資本主義をはじめとする経済やわれわれの価値観そのものに原因があることに本書は気づかせてくれる。 市場原理主義、グローバル経済、新自由主義…

誰が先頭になってそれを切り開いていくのか

新しいことは魅力的な反面、どうなるかわからない不安の要素も併せ持つ。不確定性はリスクなので、避けたいと考えるのが人情だ。 つまり、新しいこととは、迫られてやるのか、それとも自身の探求としてやるのかで大きく異なる。イノベーションが叫ばれて久し…

スピード、機動力が生命線 のんびり検討している時間はない

時代の求めるものが変化している。それは数よりもスピードだ。 これまではスケールメリットを生かして物量で勝負するというのが定石だったかもしれない。しかし、変化の激しい時代、また顧客が待てなくなっている、せっかちな昨今では、時間がより希少な資源…

リアルだからこそできること

極限的な利便性や効率性において、リアルはネットにかなわない。そこでは機械的処理を基本とするため、人間の関与は無駄な遠回りにすぎないのだ。これとは対極的に、人間関与の意味を問うならば、ネットにはできないこと、ネットとは異なる働きに着眼しない…

鏡像からの気づき、問題の解消から昇華へ

自分と相手を対決の構図とみれば、どうしても自分側に立って事実を解釈しがちなのが人間というものだ。しかし、相手にとって見えている私という鏡像で、自己を真逆から捉えることができれば、見える世界も変わってくる。

実態と体裁はシンクロしているか、中身こそが問われている

バイラルをはじめとして、話題性が主題となると、どうしても勘違いしやすくなる。いわゆる盛るという発想もそうだろう。実際がどうかではなく、どう見えるかが最優先されるのだ。 もちろん、見られるという、相手を想定して思考すること自体は悪いことではな…

マイナスのサービス、プラスのサービス

漫然とサービスと言っても、大きく二つの可能性がある。 ひとつは不十分な点を埋め合わせることで、シームレスな充足状態をつくりだすことだ。これはいわばマイナス点をつぶすことで、ゼロ状態に戻すアプローチと言える。期待されるのは均整の取れた凪の地平…