レビュー:テクノロジーは貧困を救わない 外山健太郎著
一般に技術が魔法のように問題を解決し、明るい未来をもたらすかのような楽観論が現代の技術信奉として多々見受けられるが、本書ではそんな簡単に物事は進んでいかない、技術導入の失敗例からなぜ技術がつまずくのかを明らかにしていく。
要するに、技術はそれ単独では何も為せないということだ。
成功するには、技術の受け皿がきちんと整備されているという前提が不可欠ということになる。技術とは所詮道具にすぎないのだから、道具だけあってもことは進んでいかない。
技術が有効であるのは、それを使う人がいて、それを用いる環境とフィットしていることが欠かせない。われわれがある特定の現実に対処する際に技術を用いるのであって、技術が自動的に問題をつまびらかにし、それを整然と解消する自動システムなわけではない。
いわゆる技術の失敗は、技術自体の成否うんぬんというよりも、状況や文脈を無視して、良い技術さえあればものごとはおのずと解消されるかのように傲慢にふるまうことによって生じる。
本書では技術の役割を「人を増幅させる」と評しているが、まさに何ものかを拡張するのが技術なのであって、その元となる何ものかが存在しなければ、技術は機能しない。
極論すれば、技術無しにもある程度仕組みとして機能していることが前提であって、それを加速、進化させる触媒が技術といってもいいだろう。
手段である技術はどこまで行っても手段のくびきを逃れることはできない。それにもかかわらず、技術を過信し、技術がさも目的となりうるかのごとくふるまうと道を誤る。技術の間違った援用は、希少な資源を無駄にし、技術の信頼をかえって損ねることにもなりかねないことを肝に銘じるべきだろう。
技術は開発することも難しいかもしれないが、それと同等かそれ以上に、技術をきちんと適用できるかどうかにかかっているのだ。