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レビュー:マネタイズ戦略 顧客価値提案にイノベーションを起こす新しい発想 川上昌直著

とかく日本人はマネタイズを下賤なものと考えがちであるので、どうしてもそうした発想は前面に出てくることがない。だから、良いものさえ作れば、良いサービスさえすれば、おのずと結果はついてくるといった美徳がもてはやされる傾向にあるのだろう。

だから、一方で顧客価値を声高に叫ぶものがあり、もう一方でひたすらマネタイズ先行で押し切るような冷徹なビジネス思考がまかり通ってしまうのかもしれない。

本書で著者が言いたいことは、これらは二律背反ではなく、同時的に満たすべき、追求しうる課題であるということだ。

顧客価値を追求することはマネタイズを前提とするし、同時に、マネタイズは顧客価値如何に依存する。

一見すると両者は水と油のように考えられるかもしれないが、根底では相互補完の関係になっているといえるだろう。

業界の慣習に縛られて、身動きが取れないということは、旧来のマネタイズに限界があるということだ。同じマネタイズを続けていても、これ以上顧客価値は増やせないともいえる。逆に、マネタイズの方法を刷新することができれば、それは新たな顧客価値とも直結する。

意識的か否かにかかわらず、マネタイズを軽視しているということは、結局は顧客価値、価値創造を突きつめて考えていないのと同じである。

マネタイズそのものをきれい、汚いと考えるのは人それぞれだが、結局マネタイズを直視しない限り、お金という道具を使いこなせないし、その道具にただ振り回されることにもなりかねない。

マネタイズの意味を再認識するという点で、本書は意味があるように思う。

比較的薄い200ページ程度であり、ほぼ事例中心なので、人によっては一日で読み切れる、軽めのビジネス書だといえる。