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思索のヒント、ブックレビューなどを中心に

ダイナミクス

レビュー ソーシャルメディアの生態系 を読んで

私たちは西洋を起源とする人間中心の世界認識になじんでいるので、それから脱するのは非常に難しい。 社会も個々人の人間を活かす媒体としての社会であって、逆ではないと思い込んでいる。そうした思考はあまりに強固で当然視されるため、そもそもそれに疑問…

レビュー カルチャロミクス 文化をビッグデータで計測する を読んで

われわれの「文化」を象徴するものはいったい何か。 いくつかの候補が挙がるだろうが、「言語」もその特徴的な要素の一つだといっていいだろう。 人間が言語を話す動物である以上、その行動や振る舞いが言語化され、文字として記録される。もちろん瞬間瞬間…

レビュー:プレイ・マターズ 遊び心の哲学 を読んで

遊びとは何か? そもそも、遊びとは一段低くみられていることもあって、それほど真剣に考えられることもないのだろう。 しかし、遊びには別の意味もある。たとえば、物と物との干渉を和らげるためには、一種のあそびが求められる。あそびがあるからこそ、う…

レビュー:福岡伸一、西田哲学を読む 生命をめぐる思索の旅 池田善昭、福岡伸一著

わたしたちは、現代的な思考作法にならされてしまっているので、ロジカルに考えることは善きことだとして何ら疑問に感じない。 しかし、そのロジカルこそが、大事なことを覆い隠してしまう盲点だとしたらどうだろう? 確かに論理的に物事を考えることで、状…

アルゴリズムはどれほど人を支配しているのか? を読んで

近年の情報最適化の波から人工知能やシンギュラリティの議論の中で、AI(技術)対人間という構図が良く語られれているが、実際のところはよくわかっていないのが現実ではないのか。 フィルターバブルをはじめとして、知らず知らずのうちに、自分たちが情報に…

レビュー:野性の知能 ルイーズ・バレット著 小松淳子訳

われわれは知性というものを脳内の蓄積量のようなものと認識しがちだ。しかし、コンピューターのようにすべてを情報として蓄積しようとするのはけっしてスマートな方法ではない。 動物の本性としての行動観察から、実はすべてを知っている必要はないことが明…

レビュー:なぜ今、私たちは未来をこれほど不安に感じるのか? 松村嘉浩著

最近はやりの小説仕立て、対話形式で読める経済書といっていいだろう。その意味では読みやすいので、早ければ1日、2日で読み終えられる分量である。 われわれの不安の元凶は何か、どこにあるのかが本書の主題だ。 端的にいえば、これまでの資本主義経済シス…

レビュー:マネタイズ戦略 顧客価値提案にイノベーションを起こす新しい発想 川上昌直著

とかく日本人はマネタイズを下賤なものと考えがちであるので、どうしてもそうした発想は前面に出てくることがない。だから、良いものさえ作れば、良いサービスさえすれば、おのずと結果はついてくるといった美徳がもてはやされる傾向にあるのだろう。 だから…

レビュー:変化の原理 問題の形成と解決 ポール・ワツラウィック他著

変化の必要性はしばしば問われているものの、実際、変化とは捉えどころがない部分もある。本書は心理学的臨床から敷衍して、変化の本質に迫ろうとするアプローチである。 大きな論点としては、変化といっても単一ではないということにある。 わかりにくいか…

レビュー:人体 600万年史 科学が明かす進化・健康・疾病 ダニエル・E・リーバーマン著

人類の歴史という視点からすると、われわれの日常の認識はいささか短絡といってもやぶさかではないだろう。 最適といったとき、私たちはどうしても自分の視点で、自分中心に環境と最もフィットした理想的状態を思い描きがちである。もちろん、現時点で取り急…

自分起点か相手起点か、競争概念の拡張を通じての再認識

マーケット・インか、プロダクト・アウトか。こういうと、とかくいずれか一方、二者択一の議論になりやすい。もちろん、状況を分かりやすく単純化できればそれに越したことはない。しかし実際には、それほど単純に割り切れるものは少ない。

自己認識の難しさはどこにあるのか

「自己」や「自身」という言葉は、至極当たり前のように使われていますが、ほんとうにそうでしょうか。一般的な対象物であれば、それを「それ」として明確に指し示すことができますが、生物としての人間個体以上に、自分をつかさどるものは思いのほか自分の…

レビュー:テクノロジーは貧困を救わない 外山健太郎著

一般に技術が魔法のように問題を解決し、明るい未来をもたらすかのような楽観論が現代の技術信奉として多々見受けられるが、本書ではそんな簡単に物事は進んでいかない、技術導入の失敗例からなぜ技術がつまずくのかを明らかにしていく。

レビュー:これがすべてを変える 資本主義VS気候変動 ナオミ・クライン著

温暖化の問題と言えば、環境領域の問題だとカテゴリー付けされるのが一般的だが、問題の根本を紐解いていくと、資本主義をはじめとする経済やわれわれの価値観そのものに原因があることに本書は気づかせてくれる。 市場原理主義、グローバル経済、新自由主義…

スピード、機動力が生命線 のんびり検討している時間はない

時代の求めるものが変化している。それは数よりもスピードだ。 これまではスケールメリットを生かして物量で勝負するというのが定石だったかもしれない。しかし、変化の激しい時代、また顧客が待てなくなっている、せっかちな昨今では、時間がより希少な資源…

目指すところは平均でいいのか、無難ではトリガーにならない

予定調和というとわかりずらいので、もう少しイメージしやすいのが「平均」という概念だろう。今求めているのは無難な平均的落としどころなのか。それとも他社にはない唯一的立ち位置なのか。それによってアプローチも変わってくるはずだ。 違いを追求するの…

バスワードの罠にもっと自覚的になれ

システムとは複雑性の縮減とよく言い現わされるが、ほんとうに縮減などできるのか。 厳密にいえば、全体視のために細部は捨象して、さもそれらしい本筋のみを語るというところだろう。もちろん選択と集中のように、焦点を絞ることに相応の意義はあるとしても…

手前みそよりもっと欲張りに

貪欲さというと、自分事ばかりと受け取られがちであるが、どうせならもっと欲張りに、自分の枠内だけでなく、自分の枠外をも巻き込んでいくぐらい欲張りであっていい。 社会とは個々人があえて自己の外に張り出してくるもの同士のぶつかり合いなのだから。 …

目先の変化に踊らされるな

半ば強迫観念のように変わらねばならないと、変わることを訴える論調をよく耳にする。 もちろん結果として一定の変化が生じるのは必然であろうが、変わること自体を目的化してしまうと、目先に踊らされることにもなりかねない。 いわゆる変わらねばならない…

きれいすぎることの功罪

デジタルの0/1の世界では、物事は整然と分け隔てられている。そこから敷衍して、われわれの生活や社会についても、きっちりとした、割り切れるものだと捉えたい願望が、かえって自分たちの目を曇らせているのかもしれない。 要はものごとを分析的に整然と…

想定内と想定外を使い分けられるか

とかく安定志向や無難な筋書きが非難されがちであるが、要は使い方の問題ではないだろうか。 何でもかんでも発想を飛ばせばいいというものでもないし、収めることばかりでは既定路線を外す思考はできない。 どうしても慣れ親しんだ方法論を良しとする傾向が…

スケールが変われば結果も変わる

ありがちな常識は、これまでのスケールで計測した場合の妥当を意味する。そのスケール自体が変われば、当然導かれる結果も異なることになる。 格差も国内問題と世界問題では意味するところが違い、同じ次元では測れない。 著者は、「グローバルな不平等を読…

ネガティブに浸食されないために

ネガティブらしきものをそのままにネガティブとして受け取ってしまった時点で負けだ。世間では一般的にそれをネガティブというかもしれないが、少なくとも自分にとってそれが真に正負いずれであるかは、けっきょくのところ自分が決める問題である。 不確実性…

適正指標は存在するのか

市場化を進めれば、確かに効率的に適正水準なるものが導き出されては来るが、一方でその流動性こそが不安定の元凶ともなる。 適正とはかように定めがたいものであるし、そもそも何をもって適正と見なすか、どちらかといえば環境条件との応答を通じ相対的に導…

対極が惹きつけ合う

豊かさゆえに「空」が意味を持つ。プラスを追い求める大勢ゆえにマイナスが効果を発揮する。 転換期には価値の機軸を逆転させてみると、見えなかったものが見えてくる。 仏教、特に禅の教えは何かを「得る」ための手段ではなく、むしろ何かを「失う」ための…

環境が基礎条件をつくる

われわれが意識するしないに関わらず、依って立つ環境の有利不利は必然的に生じている。ならば環境に敵対するよりも、環境を懐柔するのが事を進めるにあたっての最低ラインにあたる。 しかし、その環境因子に実際は気づけていないのが一方の現実としてある。…

ネガティブかポジティブかはあなたが決める

未だ世紀末からの悲観的空気を引きずっている現代ではあるが、考え方ひとつで物事の意味合いは180度変化する。 一見して不利な状況だからこそ、チャンスがそこには潜在する。ポジティブとネガティブは背反ではなく、ものごとの裏表にすぎないのだ。 落語「長…

課題は無尽蔵

どうしても先行きの不透明さから悲観的なものの見方に慣れすぎてしまっている昨今、逆に考えれば、悲観と楽観は等価であるといえる。ものの捉え方には表裏がある(もしくは立体視できる)のであるから、状況が悪ければ悪いほど良い点が際立つといっていいだ…

時代の要請にこたえるには

社名とは事業の中核を象徴するものであり、それが簡単に変わることはない。しかし、道具で何かを達するというよりも、機能をダイレクトに授受する(できる)ようになった昨今、中核だからこそ再定義が必要という事態もありうる。 昨日の端的さは明日の軽薄さ…

緩慢なる進化の強さとは

スピード感が勝負となる現代にあって、変わらないという選択肢はない。その一方で変わりやすさは脆さも内にはらんでいる。変わるか変わらないかの二者択一ではなく、上手に変わるには、時間をかけた習熟が欠かせない。 「生物における進化というものは、私た…