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思索のヒント、ブックレビューなどを中心に

対話、サービス

レビュー 他者と働く 「わかりあえなさ」から始める組織論 を読んで

世の中の問題には、本書にあるように、「技術的問題」と、「適応課題」と、二種類ある。この部分は重要だ。たいていの人はものごとを白黒付く、正解のあるものとみなす。それは技術的問題として解けるということを含意する。 一方で、正解を一つに決められな…

レビュー:小売再生 リアル店舗はメディアになる ダグ・スティーブンス著

小売りは物を売るのではなく、体験を売るべきだ。今やよく聞かれる論調であり、本書の主旨もその点で共通している。 小売というモデルが、古き良き20世紀的な、生活の欠乏をモノで満たすことが第一義であった時代の名残だとすれば、もはや環境が小売というス…

わたしたちが求めてやまない『意味』とは、はたして何なのか?

われわれは自身の行動に意味(意義)を求めますが、それを独立独歩、個人的な問題だと考えるならば、矮小化しすぎかもしれません。 意味というのは、人によって重要性の異なる主観的なものだが、決定的な特質は、それが自分自身よりはもっと多くのものに関係…

鏡像からの気づき、問題の解消から昇華へ

自分と相手を対決の構図とみれば、どうしても自分側に立って事実を解釈しがちなのが人間というものだ。しかし、相手にとって見えている私という鏡像で、自己を真逆から捉えることができれば、見える世界も変わってくる。

マイナスのサービス、プラスのサービス

漫然とサービスと言っても、大きく二つの可能性がある。 ひとつは不十分な点を埋め合わせることで、シームレスな充足状態をつくりだすことだ。これはいわばマイナス点をつぶすことで、ゼロ状態に戻すアプローチと言える。期待されるのは均整の取れた凪の地平…

ちょっとした隙間が問いかける、些細な気づきと気遣い

便利な世の中になっていく一方で、ちょっとした隙間にはまったものは取り残されていく現実がある。この「ちょっとした」がキーワードだ。 明確に区分けできる、単目的で独立したものは、機械的にも効率的にも扱いやすいが、中途半端なもの、ある程度個人の領…

ダイアローグがつながりを育てる

情報の疎通や取捨選択の可能性が変化してきたことによって、リアル世界における私たちの他者とのつながり方にも大きな変化が押し寄せています。近年のソーシャルという言葉の流行はまさにこうした事実を裏付けるものです。 他者とつながりやすくなった一方で…

対話ありきで考えることで見えてくるもの

どんなに客観的にあろうとしても、自己規律には本来的に見えない部分がある。自分で自分を見ることの難しさだ。 逆に考えるならば、自分は自分だけで存立しうるのかと問いかければ、おのずと答えが見えてくる。他者や組織、社会といった写し鏡があってこその…

アプローチは一方通行ではない

確かさ重視の姿勢からは、モノとして分かりやすく事実を同定したい欲求もわからなくはない。一方、モノをはみ出していく筋書きでは、体験という形をとって、その場その時の条件、背景、環境などと結びつき、より固有の文脈が強く主張される。この場合、汎用…

選択自体が苦痛の時代

たくさんの選択肢がありすぎると、人間はかえって選べなくなる、とは心理学的によく言われることではあるが、情報が手軽に取得されるようになった現代では、まさに切実な問題なのかもしれない。 かつては自身の選択こそが自由の象徴ととらえられていたが、今…

他者依存では空気に飲まれる

プラス×プラスであれば増幅されるが、プラス×マイナスであれば逆方向に反発してしまう。 議論の舞台は何でも解決ボックスではない。個々人が舞台そのものの確立に意識を向けないとすれば、机上の議論は混迷、空転するしかない。 十分に議論したということ自…

発想を飛ばす一つの着眼点

経済効果が測れないとはいえ、少なくとも企業イメージや社会的役割に資するという意味で無駄ではない。とかく販売を増やすにはという一本調子の思考に囚われやすいところを、無機的な自販機から有機的なコミュニティ存在に進化させる点が面白い。そこに次な…

意味をつくり出す

人が介在するのには相応の意味がある。もちろん、無条件に自ずと意味があるのではなく、意味をそこにつくり出せるかどうかが問われている。 意味を与えられる側ではなく、意味を与える側に立っていれば、ロボットに仕事が置き換えられるといった無用の心配を…

自分だけが気づければいいのか

自らの気づきは当然不可欠であるが、それ以上に周りにうまく気づかせてあげられるか、お互いに新たな気づきの次元が作れるかが問われている。 ファシリテーションは、人と人が話し合い、わかり合うための方法です。それは「いま・ここ」で出会った人と人が「…

単なる手段で終わらない

広告は商品を訴求する手段であるが、それを単目的のそれだけのものにとどめるのか、それともより発展性のあるコミュニケーションツールに引き上げるのか。 旧来の広告が飽きられている、むしろ邪魔な存在とすら見なされている現代においては、すでに広告では…

提供という上から目線では足りない

PRは関係性だと言いつつ、どう提供するかという話に終始するのでは本末転倒。授受というロジックに縛られているうちは、関係性というフラットな結びつきと、そこからの発展的展望は見えない。 つまりは「企業や組織がいかに世の中とうまくやっていくか」とい…

自動化は何をあぶりだすのか

一時期中抜きと称して卸を介在させない直販がもてはやされたが、効率だけを突き詰めるなら、物を買うチャネルとしての小売自体が不要とされる可能性もある。 自動化はわれわれの関与自体を排除していくが、はたしてそれだけでいいのか。人間の注意、関心が希…

課題は無尽蔵

どうしても先行きの不透明さから悲観的なものの見方に慣れすぎてしまっている昨今、逆に考えれば、悲観と楽観は等価であるといえる。ものの捉え方には表裏がある(もしくは立体視できる)のであるから、状況が悪ければ悪いほど良い点が際立つといっていいだ…

漫然としていては見えてこない

モノに溢れかえった現代だからこそ、見えないところにカギがある。むしろ、見えない部分をどう作りこめるかが差異を生む。 接待の究極を求めると、宴席を持つ側と招かれる側の両方が格好良く振る舞えるように工夫されているのがよくわかる。もてなしの手本に…

引き算がもたらす余地の可能性

押してダメなら引いてみろとは言い得て妙で、「発想の転換」が突破口となる場合もあります。考えようによっては、足すよりも引くほうが高等技術です。一見すると不完全なものに可能性というプラスアルファを見出す解釈もできるでしょう。 何事も自己完結させ…

「営業」という表現はもはや時代遅れのもの

営業というと売り込むというイメージが強い表現ですが、現代の双方向性の世界では、一方的な営業というスタイルは時代遅れと言っていいかと思います。 今日の優れた営業は、顧客が目標を達成するために必要なことを気づかせ、それに応える。 優秀な営業担当…

逆流するロジスティクス

歴史的にみるならば、工業化が集団としての企業、組織の役割を拡大してきました。それに引き続くサービス化においても、基本となる構造の大筋に変化はなかったといえるでしょう。そこには何らかのものを『提供する』という、一意の方向に沿ったロジスティク…

あなたにとっての顧客はどこに位置付けられますか

対話は今も昔もビジネスの基本ですが、そもそも提供者と受容者という区分け自体が時代にそぐわなくなってきているのかもしれません。その意味で「対話」という形態も進化してきていますし、進化させていかなければならないということでしょう。 「ユーザーの…

他者あってこそのわれわれの自由という発想

自由に発想するということがよく言われますが、自由=無制約という認識ではそれこそ無節操になりかねません。 自由の本質は、他人との関係を持たないことからくる自然状態の在り方をいうのではなく、人々との関係の充実にあるのである。われわれは、他の人と…

論理的、合理的がいつも正しいとは限らない

過剰適応という表現がありますが、合理性についても同じことがあてはまるようです。合理的とは非常に理知的性質を示すものであって、何ら否定される要因ではありません。しかし、すべてを計算し尽くした(かのような)態度は、ネガティブな面を惹起すること…

対話から構想されるもの

「対」という概念には幅がありますが、それを二者間の競合姿勢と捉えると、勝つか負けるかといった攻撃的姿勢が強調されることになります。もちろん、厳しい生存競争を勝ち抜く上でのたくましさは望ましい姿勢ですが、ゼロサムゲームがすべてとは限りません…

伝わるの先に目指すもの

細かな違いですが、「伝える」とは意志的なものである一方、「伝わる」とは事実です。キャッチボールの関係性でいえば、伝え手志向に対する受け手志向の違いと言い換えることもできます。 「伝えた」といえば、それも事実ではないかといわれるかもしれません…

ITでは満たすことの難しいリアリティ

ビッグデータをはじめ、今やデータ全盛の時代である。データを駆使すれば、できないことはない、見えないことも見えるようになる。まさにデータ様さまである。 一方、データのようにきれいに割り切れないのが人間が人間たるゆえんともいえる。本来はビジネス…

主客という二分法を超えて

西洋科学の基本作法からいえば、客観性が重視されるのはあたり前のことといっていいでしょう。一方で、ビジネスは自身が主体的にコミットすることを出発点とするものですので、主の領域が客の領域に押し切られるべきものではありません。 多くの企業で「顧客…

購買を対話にまで昇華する

いつの時代も、顧客やそのニーズを軽視することはできません。しかしながら、顧客に合わせるという受け身のニュアンスを含んだ対応では、それなりの満足は得られるとしても、突き抜けた満足を見出すには至らないでしょう。 モノが重要なのか、それともモノを…