ITでは満たすことの難しいリアリティ
ビッグデータをはじめ、今やデータ全盛の時代である。データを駆使すれば、できないことはない、見えないことも見えるようになる。まさにデータ様さまである。
一方、データのようにきれいに割り切れないのが人間が人間たるゆえんともいえる。本来はビジネスを支援する強力なツールであったはずのITが、もし人との結びつきを疎遠なものにしてしまっているとしたら、本末転倒ではないだろうか。
ITに依存しすぎて「勘と経験」の小売業経営を完全に否定することは、売り手と買い手の間に大きな溝を作り、ひいてはデータを駆使したがために客離れを助長することにもなりかねない。 データより五感で売る 日経ビジネス
データは確かにわれわれのふるまいをつまびらかにする。しかしそれは断片としてのわれわれであって、われわれ自身ではない。
ビジネスとして向き合うのはデータなのか、人なのか。 データでわかったような気になるのが最もまずいパターンだ。データに注視すればするほど、相手を遠のけてしまっているとしたら、意味のないデータ遊びといわれてもやむを得ない。
人と真摯に向き合う、それを補足するものとしてのITであって、逆ではない。ITは気軽につながれる分、深みを得ることは難しい。そういった用途特性を踏まえた上での賢い利用が、使いこなすということだろう。