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マイナスのサービス、プラスのサービス

漫然とサービスと言っても、大きく二つの可能性がある。

ひとつは不十分な点を埋め合わせることで、シームレスな充足状態をつくりだすことだ。これはいわばマイナス点をつぶすことで、ゼロ状態に戻すアプローチと言える。期待されるのは均整の取れた凪の地平線だ。

もうひとつは現状を起点に、より突出したプラスアルファを打ち出すことだ。こちらの場合は、ゼロから出発して、プラスの特性を強調する。ゆえにフラットなバランスよりも、強弱のニュアンスをより明確に意識した形になる。

いわゆるお客様ありきに代表される、従たるサービスの概念においては、どちらかと言えば前者のネガティブ回避的な立ち位置が強調されることが多かった。あってあたり前、不足があればいかにきれいに埋め合わせるか、リカバリー発想と言っていいだろう。

もちろん、過不足の生じやすい現実の局面において、負の側面を解消し、それを適正域に誘導していくという意味では、悪い方法ではない。しかし、流動的状況に対して常に一歩後追いの形でフォローアップしていくのは、受け身と捉えられても致し方ない。

これとは反対に、プラスに目を向けることは、一般にはサービスというよりも、新規創造とみなされることが多い。しかし、サービスが後方支援である必然はない。むしろ攻めのサービスとしては、先行提起を通じて、期待の先取りを為すことで、達成水準の自己決定権を持つことになる。

もちろんサービスの使命として、他者との互恵関係は欠かせないが、そこには自他のバランスが大きく関与する。一見他者を尊重し受けに回ることが良きことのようにも思われるが、偏った重心は不安定要因に他ならない。固定的状態であればまだしも、状況の流動性を加味して考えるならば、常に流れを意識して、互いがポジションを調整するような、フットワークの柔軟性は、いずれの側にも求められるはずである。

その意味で、二つのサービスは排他ではなく、相互補完の関係にあるともいえるだろう。