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レビュー:企業変革力 ジョン・P・コッター著 梅津祐良訳 

変わらなくてはならない、しかし簡単には変われない、という企業の現実を詳述したもの。特段目新しいわけではなく、当然と言えば当然のはなしで、実感として多くの組織人に共感が得られる内容ではある。

個人的に関心の高いポイントは二点、リーダーシップの位置づけと企業文化の捉え方についてである。

本書ではマネジメントとリーダーシップの違いを安定と変化で対比的に位置づけており、これまでの組織は前者に重心があるため、そのままでは変革は困難であると説く。

マネジメントとは、人材と技術を管理する複雑なシステムをつつがなく信仰させるためのさまざまなプロセスである、と定義できる。

これに対しリーダーシップとは、まず組織を誕生させる、あるいはその組織を激しく変化している環境に適応させていくさまざまなプロセスと定義できる。 

 さらに文化にかかる問題がこのリーダーシップの領域にあると説く。

構造(またはシステム)がマネジメント機能に属するものであるのに対し、文化(またはビジョン)はリーダーシップの領域に属するものだからである。

だからといって文化を変えればいいのかというとそうとも言えない 。文化はもっとも変わりずらいものであるから、行動を通じて文化を育てていくしかなく、文化は最終局面での課題だと説く。

文化とリーダーシップを結びつけるのは意識してこなかった。文化とは気づかないところで醸成されるものとの思い込みがあるからかもしれない。もちろん、直接的に構築できるものでもないのだが、どうしても背景にあって盲点になりがちな話題だ。

しかし、文化がその組織の行動原理として強い影響力を持つ以上、リーダーシップの枠内で、文化の方向付けと変革の方向をシンクロさせていかなければ、結局変化は導けないとの見立ては、確かにその通りだといえる。