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思索のヒント、ブックレビューなどを中心に

レビュー:福岡伸一、西田哲学を読む 生命をめぐる思索の旅 池田善昭、福岡伸一著

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わたしたちは、現代的な思考作法にならされてしまっているので、ロジカルに考えることは善きことだとして何ら疑問に感じない。

しかし、そのロジカルこそが、大事なことを覆い隠してしまう盲点だとしたらどうだろう?

確かに論理的に物事を考えることで、状況を客観的に、整理して捉えることができるは事実だ。しかし、それは一種の単純化フィルターを通して、その網にかかるものだけを掬いあげているのであって、網の目をすり抜けてしまうものが少なからずある。

もしも本当に大事なものが、ロジカルの網にかからない微細なところに宿っているとしたらどうだろう。われわれの思考は穴だらけだということになる。

その西洋科学が見落としてしまっているものこそが西田の言う「ピュシス」の世界だ。

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アルゴリズムはどれほど人を支配しているのか? を読んで

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近年の情報最適化の波から人工知能やシンギュラリティの議論の中で、AI(技術)対人間という構図が良く語られれているが、実際のところはよくわかっていないのが現実ではないのか。

フィルターバブルをはじめとして、知らず知らずのうちに、自分たちが情報に操られていると聞くと、なんとなく不安だとか、恐ろしいといったイメージが、われわれの想像力を喚起して、必要以上にそうした情報を過大評価している懸念も大きい。

本書は数学者の立場から、アルゴリズムにできることとできないこと、これからのAIの発展といったものを見通す内容となっている。

結局のところ、アルゴリズムはあくまでもアルゴリズムであって、それ以上でもそれ以下でもないということだろう。

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レビュー:ザ・レトリック 人生の武器としての伝える技術 ジェイ・ハインリックス著

時制といった場合、英語の文法としてそれを意識した経験はあっても、日常の話法として、それが時制+αの意図を表現しうるとはなかなか理解していないのが実情だろう。本書で押さえるべきポイントはまさにその「時制」にあるといっていい。

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ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来 ユヴァル・ノア・ハラリ を読んで

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サピエンス全史のユヴァル・ノア・ハラリの続編のようなものといっていいだろうか。

サピエンス全史がこれまでを取り上げていたのに対し、ホモ・デウスでは人間のこれからを描き出す。題名にもある「ホモ・デウス」とは何なのか。

サピエンスが賢いというのであれば、デウスは神ということだ。つまり、生物として単に賢い種から、神にもなり替わる人とはどういうことだろう。

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#REPUBLIC インターネットは民主主義に何をもたらすのか を読んで

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自由と民主主義にとって、インターネットは善なのか、悪なのか?

 

まあ、よくある議論ではある。技術信奉派は無条件にそれを評価するだろうし、技術懐疑派はそれに待ったをかける。

一般に、インターネットは少数意見、ロングテールを拾いやすくなるといわれているが、その一方で、嗜好の最適化が自分好みのニュースしか目に触れないタイムラインをつくりだす、視野狭窄という問題点も指摘される。

個々人の趣味嗜好を尊重して、自然に任せるといえば聞こえはいいが、心地よい状況に身をゆだね、立ち止まって思考することを忌避するならば、それは進歩ではなく退歩に至るだろう。

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