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全体とはなにか、一歩立ち止まって見直してみる

私たちは気軽に『全体』という考え方を用いますが、全体とははたして容易に捉えられるものなのでしょうか。

概念としては、すべてを総じるまるで神のような視点を意図しているわけですが、実際の私たちの視野は、特定の志向性を持っているものです。

フォ レットの思想の特徴的な点は、人こそが、すべてのビジネス活動、いやすべての活動の中心であるということだった。「われわれに起こるすべての問題に関する 自分たちの考えを専門分化させるべきではない」とフォレットは述べる。 リー ダーシップについてのフォレットのアドバイスは、現代にも通用する。「もっとも成功するリーダーは、顕在化していない全体像を見る人である」。フォレット はリーダーの役割を、調整、ビジネスの目的の定義、そして予測と捉えた。 マネジメントの世紀 スチュアート・クレイナー

現実的に把握できる全体という目線は、個別の視野(切り口)を複合することで、少しでも過不足ない状況認識を確保するもの、そういった相対的位置づけが近しいといえるでしょう。

一点注視のナローな視座に対して、フィールドを概観するワイドな視座とも言い換えられるかもしれません。つまり、全体がすべてに優先するというよりも、断片と全体像(イメージ)を常に対比しながら、個々の視座が持つバイアスに気づけるだけの余地を担保しておくことがポイントになります。

全体という志向性は有用な示唆を含む考え方ではありますが、全体と安易に括ってしまうことで思考停止に陥らないよう、その使い方には細心の注意を要するものです。全体は万能ではない、と言い換えてもいいかもしれません。