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引き算と排除は似て非なるもの

昨今の社会の潮流として、不寛容や排除の論理が目立ってきている。ではビジネスにおいてそうした発想はどう交わるのだろうか。

一見すると、選択と集中を掲げる戦略において、いらないものは潔く捨て去るべしといった論理が成立するかに見える。しかし、意思決定においてひとつを選択することと、選択肢を消し去ることは同義ではない。結局、排除していく発想では、強権的に従わせることと、視野を狭窄してしまうというバイアスから逃れられない。

オプションBともいわれるように、選択肢には一定の振れ幅を持っておくことが、環境変化へのバッファーとして機能する。もちろん理念や信念を曲げていいわけではないが、過度に特定の枠組みを絶対化すると、かえってそれが足枷となり、周りが見えなくなる。

本稿でも、引き算の効用について、「高等技術としての引き算」、「引き算がもたらす余地の可能性」などで何度か触れてきているが、引き算と排除では何が違うのか。それは体化して咀嚼するプロセスの有無にある。自分のものにした後で削り出すことは深化だが、初めから変化を否定してしまえば、先細りで小さくまとまるしかない。

思考をおのずと開かせてくれるものか、それとも逆に窮屈に押し込めるものか、この違いが両社の線引きになるだろう。