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思索のヒント、ブックレビューなどを中心に

ほんとうの意味で試行錯誤できる情況にあるか

試行錯誤とは含蓄のある言い回しですが、ミスが許されない世界においては必ずしも歓迎されない方法論かもしれません。加点法がいいのか、減点法がいいのか、一概に論じることはできませんが、前者が積極性と、後者が消極性と結び付く可能性は高いといえるでしょう。

筆者が驚いたのは、戦略がうまくいかないそもそもの「根本的な理由」について、ビジネスパーソンの間で経営学の知識共有が進んでいないことです。その「根本的な理由」とは、「企業のとる『戦略』には、それぞれ通用する範囲がある」ということです。

リアル・オプションとは、そもそも事業環境の不確実性が高いことを前提にした考えです。その含意を平たく言えば、「不確実性の高いときには、とにかくまず は少額でもいいから投資をしたり、小ロットでいいから製品・サービスを市場に出したりしてみよう」という感じでしょうか。

エリック・リース氏が書いた『リーン・スタートアップ』(日経BP社)という本が日本でも話題になりましたが、これはまさにリアル・オプションに近い発想 です。シュンペーター型競争の聖地とも言えるシリコンバレーで起業して成功すれば、その発想がリアル・オプションに近づくのは当然かもしれません。

パナソニックとソニーの明暗を分ける、最も根本的な理由 ウンチクだけの戦略議論から、そろそろ卒業しよう

新しいことにチャレンジしろと言いつつ、評価は減点法で行うとしたらどうでしょうか。いくら失敗から学ぶことが多かろうとも、失敗を単に失敗としか評価しないのであれば、それを糧として経験値をあげることは制約されるでしょう。

目的性が変化志向か、それとも安定志向かで、とるべき方法論は異なります。また、変化を求め ることは、それに相応するリスクを許容するということですから、組織として、そういった収支が担保されているかどうかが問われます。変革を唱えつつ、体制は旧態然としたものであるならば、竜頭蛇尾、結果は自ずと推し量れます。

トライアルとは、ギャンブルではなく学習過程です。学ぶということはそれなりの投資を必要とするものです。学習する組織か、それとも学習できない組織か、短期的にはごまかしが効く場合もあるでしょうが、この差が顕在化した時点では、時すでに遅しとなりかねません。スピードが正義とは言いませんが、スピードを味方にできるかどうがが成否に大きく影響することは否定すべくもありません。