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イニシアチブの射程

経営課題を考える際には、それほど意識されていませんが、自らの采配によって結果が規定されるものだという暗黙の前提があるように思います。もちろん目的 と成果をいかに結びつけるかが問われるという意味で、こうした理解は至極当然なものですが、一般的にというものを絶対的にと理解してしまうと思い込みの罠 にはまります。

経営にとってイニシアチブは欠かせないものである一方、現実には自らコントロールできる領域と、自らはコントロールできない領域が歴然と存在します。この自らコントロールできないという部分を不可抗力としてあらかじめ除外してしまうと、現実認識を歪めることにつながります。

イニシアチブとは主体性の発揮ということですから、理知的な人間活動にとってなくてはならないものです。また、主導権を握るという意味では、競争に打ち勝っていくための必須要件です。ゆえに、イニシアチブの有無ということでは、有るにこしたことはありません。

一方で、イニシアチブにも適不適があります。イニシアチブと称して我を打ち出しすぎれば、まとまるものもまとまりません。組織活動においても、社会活動においても、他者との何らかの協調を要する場面では、自己をセーブすることも有効なアプローチです。言い換えるならば、イニシアチブ外の領域を十分に見据えることで、イニシアチブの焦点がより明確になるといってもいいでしょう。

これまでいろいろな知的アプローチを検討してきましたが、一般的に知とは個々人の主体性と連動して理解されるものですので、イニシアチブの問題系と理解することができます。その意味では、戦略やリテラシー、インテリジェンスもこの範疇で捉えられます。 他方、自らのコントロール外にある他者にスポットを当て、場合によっては自己以上に他者や環境が尊重される問題系では、別のロジックが要請されます。アドバンストデシジョンでも触れているとおり、これはコラボレーションやインタラクションの領分です。近年のソーシャルへの関心の高まりは、こちらの領域の課題意識ですので、イニシアチブとは対比的に捉えていくことが求められているのです。

以上、イニシアチブの守備範囲を簡単に整理してきましたが、人間行動はイニシアチブと紐づけて理解するという先入観が強い性質に照らして、あえて一歩引いてみるだけでも大きな気づきが得られるものです。 イニシアチブは万能ではない、だからこそどうイニシアチブを発揮するかが問われるのです。