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リテラシーと経営実践

リテラシーとは端的にいえば知的能力、素養といったものです。

つまり、リテラシーとは事に向かい合う事前準備として、最低限の認識、咀嚼の水準を示しています。これを基に実践行動を組み立てていくという意味で、なくてはならないものですが、それ自体を目的としてしまうと、本質を見失います。

また、リテラシーにはいかに現実に向き合うかという、状況を見据え間合いを計るという役割もあります。この意味では、適応力とリテラシーは連続的なものと考えられます。すり合わせというと、日本人にはなじみの深い概念ですが、こうしたアプローチでは、感度が重要なファクターになります。

異物を異物として感知する、そんなことはあたり前だと思われるでしょうが、常識に囚われるという点で、われわれの認識とは極めてあいまいなものです。近 年、危機管理の不備が問われるケースが増えていますが、リテラシーの欠如はこうした問題にも直結していると肝に銘じるべきです。

このように、リテラシーとは一般に、個々人がはじめに身につけておく基礎体力という位置づけになります。ただし、上記のようにそれは、現実に対処する中で感覚的に磨いていかなければならないものでもあります。その意味では、机上の学習よりも、実践を通じて、他者との相関の中で育んでいくことが求められるものなのです。

知的活動というとどうしても頭でっかちなものになりがちですが、そうした過ちを避けるためにも、ここでは感性を強調しています。なぜなら、感性とは自分と外部とのコミュニケーションに他ならないからです。 感性などというと非科学的なものと思われるかもしれませんが、関係を征するものがマネジメントを征するという意味で、他者との距離感を的確に計るための感性は軽視できません。

つまり、リテラシーとはきわめて個人的でありながら、同時にネットワークに開かれたものといえるでしょう。少なくとも独力で為せるものではないと気付くことだけでも、根幹のリテラシーを押さえたことになります。 マネジメントにおけるリテラシーとはそういった性質のものです。

リテラシーとはストックの原理というよりも、アプローチの原理です。つまり、情報や知を蓄えるのではなく、これからの行動を下支えするもの、それがリテラシーです。逆にいえば、行動するからこそ、新たな知見が得られるのだといってもいいでしょう。 情報化はどうしても有用なものの取り込みばかりが先行してしまいますが、意識してアウトプットに重点を置くことこそ、情報化社会での知への向き合い方と言えます。