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成長志向の罠

経営課題を数値化を通じて理解することは、しごく当然の分析手法です。より客観的、理知的に現象を捉えていく上で、定量化することは非常に効果的なもので す。しかし、数字に過度に依存すると、経営の筋道を見えなくする危険性もはらんでいます。数字はものごとを解析していく上で非常に優れたツールですが、手 段を目的と勘違いすると、むしろ弊害が顕在化することとなります。また、何のための数値なのかが不明瞭な、焦点がずれた利用は、数字の罠でもあります。

企業の性として、成長すればするほど、その成長が第一の命題として、マネジメントに重くのしかかってきます。しかし、昨年比という過去に縛られた目線から はリニアな発想しか生まれません。もし本当に現状延長でいいのだとすれば、戦略など気に掛ける必要もないかもしれません。

「成長のために何をするか」ではなく、「何を求めた結果としての成長なのか」を見定めることがマネジメントの役割です。 成長重視でいく場合には、成長を規模という一次元で捉えるのではなく、少なくとも3次元で捉える必要があります。それは、成長を成熟や進化、洗練と言い換えてもきちんと筋が通るかどうか、検証する必要があります。

基本フレームに従うならば、そのステージごとに数字の役割は変わります。前半は数値化へいざなうプロセスであり、後半は数値をガイドラインとするものです。仮に数値を 目的に代用してよいとしても、それはほんの限られた領域の話です。目的と目標が異なるように、数値が扱える領分を越えてしまえば、ただ数字に振り回される だけになります。 マネジメントは数値を使いこなす必要はありますが、きちんとその背景と紐づけていく、リテラシーが欠かせません。

矛盾しているように感じるかもしれませんが、戦略をより具体化するために数値におこしていくことと、数値目標ありきでそこにもっともらしくシナリオを付け加えるのとでは、同じく数値を取り扱うといってもまったく次元の異なる話です。 成長といっても、答えは一つではないということです。あくまで、通過点の一つの表れとして、過去と現在を比べた推移があるに過ぎません。成功の形をきちんと整理立てるものとして、戦略が機能しているのか、振り返って見ることが重要です。