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アートとデザイン、テクノロジーの差異

別掲『ICT、ナレッジ、インテリジェンス』でも扱ったように、“知”のテーマでは、知と情報の関わりを3者3様な特徴から整理してきました。同様のことが“技”の領域でも当てはまります。一般に技術というとテクノロジーがその代表格とみなされますが、一方で人間の内に秘めた能力に依拠したものはアートと認識されます。それに比べて、両者の中間領域を担うのがデザインであり、それはプロセスに注視し、インタラクションに強みを発揮する領域でもあります。

経営においても、自社をどう位置付け、何に向き合うのかが大きな比重を占めることから、デザインを基点とする発想、思考が避けて通れません。 (一般にデザイン思考として、試行錯誤を通じて筋道立てていく手法も普及していますが、ここではそのような「デザイン思考」とは異なるものとして、ビジネスデザインを位置付けています。詳細は『ビジネスデザイン』を参照してください)

一見すると、デザインが意味する領域は美的センスを問われる、表現に関わるものとみなされます。一方で経営はビジネスの実行という極めて現実的な対応が求 められるものであり、美醜でいけば醜を見据えなければなりません。そう考えると相当に温度差があるようにも感じられますが、デザインを“目的達成に向け筋を通すこと”だったり、“一貫したストーリーに向け総力を結集する働き”と捉えるならば、両者は至極当然に同一の地平で捉えることができるでしょう。

マネジメントにデザインを組み入れるということは、一見無関係に見えたり、効率化といった完成度の問題に映るかもしれません。しかしインタラクションを基本とする組織行動では、関係性を取り込んで新たな展開を掘り起こす、未来志向の活動がそれにあたります。意思決定やリーダーシップの発揮は、あらかじめ答えのある、収まりのいい問題ばかりではありませんが、むしろ壁を突き破っていく力強さにこそ、デザインの真価が現れると言えます。

デザインとは、ごく日常的に用いられる表現ではありますが、ネットワークが圧倒的スピードで拡大している現代環境では、その役割も大きく広がってきています。関係性(リレーショナル)を最大限に活かした目的設定の道筋として、高次のデザイン発想が求められているのです。

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