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現状延長という幻想

意思決定を先送りする方便として、現状延長という物言いがまかり通っているが、よくよく考えるとこれはちょっとおかしなところがある。もし現状延長なる形態がほんとうに成立するならば、それは相当な高尚技巧を要するはずだ。

なぜなら事態は刻々変化する、いやしてしまうといってもいいだろう。つまり字義通り現状を延長するためには、変化する環境のスピードとちょうど同じスピードで自らも変化してシンクロさせなければならない。一般には状況はこれからも変化しないという前提で、現状延長なる幻想に行き着くのだろうが、まさにその前提こそ疑ってみる必要があるだろう。

世の中は否応なく変化してしまうのだ。

だから、これへの処し方としては、あえて変化に抗する変えない選択をするか、変化に巻き込まれる前に先に変化してしまうかの二通りの選択肢を選ぶことになる。それでも現状延長なる夢を抱くとすれば、実際には意思決定そのものを放棄して、流されるまま、単に無為に甘んじるということにすぎない。

つまり、意思決定とは、いずれにしても切り替えるということが不可欠だ。どうせ変えなければならないとしたら、中途半端に現状保存を考えるよりも、メリハリをつけて取捨選択をしたほうがよっぽど簡単だ。前提を見直すと、これほど状況の見え方は変わってくる。