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イノベーションという言葉に騙されていないか?

イノベーションという言葉は、非常に乱暴な言い方をすれば、何か新しいこと、目先の変わった取り組みを指し示すものとして、安易に氾濫している印象を受けます。それゆえ、イノベーションが何を指し示しているのか、腰を据えた問われ方をすると、途端にあいまいなものになってしまいます。

私たちはリ・インベンションを「ある製品について、いまとなっては解消できるようになったにもかかわらず放置されている不合理や、かつては合理的だったもののなかに新たに芽生えた不合理を解消すべく、当該製品を特徴づけると長らく考えられてきた特性パラメーターを無視して、誰に、何を、どのように提供すべきものなのかにまで立ち返り、評価軸自体を作り替えること」と定義しています。 リ・インベンション 概念のブレークスルーをどう生み出すか 三品和広編著 東洋経済新報社

上記著作では、そうしたイノベーションに対して、リ・インベンションというアプローチを対比することで、より焦点を当てるべき側面を顕在化している一つの試みです。

イノベーションというものも本来、広くとらえれば、ここで言われているようなリ・インベンションに相当する領域を含んでいるはずですが、残念ながら巷に流布するイノベーションとはもっと限定的で即物的な現象に限られていることの証左ともいえるでしょう。

こうした残念な現状を踏まえるならば、イノベーションイノベーションと声高に叫ぶような論説に対しては、安易な鵜呑みを避け、一歩距離を置いたところからの冷静な取捨選択が求められるといえます。

イノベーションとは何を意味するか、ここで再考するいい機会かもしれません。