something eureka

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したたかさこそがデザインである

「デザイン」とは体裁のいい表現ですが、実体としての意味内容があいまいになる傾向がありますので、ここではデザイン=対象への接近法と読み替えてみたいと思います。

ビジネスとは対外折衝が避けて通れませんので、まさにここで定義されたデザインと意を同じくするはずです。 このとき、経済情勢の移ろいを咀嚼し、そこに自社の存在意義を投影していくためには、一点突破の「剛」なやり方よりも、焦点の拡縮による「柔」のあぶりだしが効果的です。なぜならば、変化という事態に対する処し方において、前者が変化を否定するのに対し、後者は変化を懐柔するからです。

これからの時代、企業はアジャイル(俊敏さ)を重視して設計されるべきです。ビジネスを、常に進化する生物のように捉える。そうすると、組織のあらゆる側面でデザイン思考やクリエイティブ思考が活きてきます。 「大企業にイノベーションは起こせない」は間違い IDEOのCEO、語る 日経ビジネスオンライン

憎まれっ子世にはばかるとはよく言ったもので、「しぶとさ」が企業の生き残りを担保する要件です。そのためには、使えるものは何でも使うのがセオリーですが、得てして使いやすいものほど役に立ちません。むしろ手に余るものこそ、あえて取り込んでくるが意味の拡張をもたらします。「変化」という外部事象は、とかく制御不能なものと敬遠されがちですが、これを最大限に利用し尽くすしたたかさが、変化による「果実」を享受するための道筋です。

デザインを対象への接近法とすると、これは単に対象との距離を縮めることが目的ではありません。変化する動的事象は追えば逃げるようなものです。変化をピンポイントでクリップすることは、変化のうまみを殺すことでもあります。ですから、変化を同定するというよりも、その勢いのトレンドに伴走すると解釈するほうがいいかもしれません。

このように変化との付き合い方を考えてくると、一つのアプローチとして、われわれの側の焦点を自由に拡縮できるレンジで確保すること、「自由に」という柔軟性がカギとなります。可変なメジャーに象徴されるように、スケールとスコープが接近法の武器となるものです。