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モノコト発想をもう一度見直してみると…

ものづくりへの偏重への自戒を込めてことづくり、コトへの転換を説く議論はずいぶん言い尽くされてきたところです。しかしいまだそれが問われ続けているということは、ものづくり思考からの脱却が思うように進んでいないということでしょう。

西欧の二分法が論理的思考を象徴するということもあって、ものなのか、ことなのか、 「モノ vs コト」という図式が象徴的に用いられることが多いかと思われます。しかしながら、モノないしはコトのいずれを優先すべきかという二者択一の議論でいいのかどうか、今一度問い直してみる必要があるように思われます。

経営モデルを変えるというか、“ものこと”の本当の意味を考えなくてはいけないとは言っているのですが、経営モデルを変えるにしても、出発点はあくまで “ものづくり”なんです。要はものづくりにおいて“もの”だけを考えている時代ではなくなったということだと思うんですね。 日本のものづくりは最強、ITへの対応が望まれる 東京理科大学・中根滋理事長と探る“もの・ことづくり” 日経ビジネスオンライン

では、モノやコトという議論で何が欠落しているのかを考えたとき、はたしてそこに主題があるのかどうかということです。モノにしろ、コトにしろ、それは具現化のツールないしはプロセスではあっても、肝心のそれを束ねるところのものが見えてきません。

大量生産、大量消費の世の中ではいまさら疑問に思わないでしょうが、顔の見えない状態とは、本来気持ちの悪いものです。つまり、モノやコトの議論に先立って、それらを束ねるもの=「ヒト」という位置づけが欠かせないはずです。

あえて対比させるならば、ものづくり、ことづくりを統べるものとしてのひとづくり、ここでのヒトとは生産者としての側面と消費者としての側面の二つが含まれます。

「モノで」、「コトで」、豊かにする前段に、「ヒトが」、「ヒトを」豊かにするということです。サービス化社会といったとき、どうしてもソリューションに目が向かいがちですが、それはサービスの一面しか照らしていないことに留意する必要があります。