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思索のヒント、ブックレビューなどを中心に

組織あっての自分をどう表現していくか

組織人や会社人間というとネガティブな印象を持たれるかもしれませんが、人間とは大なり小なり外部とのつながり、折衝を通じてのみ自己を表現しうるというのが現実の姿です。自分の思考は唯一無二の独立した、尊いものだとの思いは大事なものですが、そのアイデンティティは外部に対して開かれていてこそ、自分らしさとして意味を持つといえます。

同感という他者との関係性に着目することで、スミスはむしろ人間が複数の人の間の同意を前提とする間主観的な存在、あるいは社会的な存在であることを明確 にしたのです。実際スミスは、この同感という概念が社会の秩序を形成していると考えます。それこそが『道徳感情論』の主題であり、またその経済秩序への応 用が『国富論』にほかならないのです。 人間にとって大事なものは何か? アダム・スミスの「同感」概念がもつ新規性 ダイヤモンドオンライン

個が集まって社会がかたちづくられるのか、それとも社会があるから個が認められるのか、ここの違いは大きなものです。

西欧の趨勢もあり、時代的に個の尊重が声高に叫ばれる傾向にありますが、はたして周囲から分断された「個」にどれだけの意味があるでしょうか。近年のSNSの流行は是非のあるところですが、繋がりたい、もしくは繋がらずにはいられないという本性は人間の特質の一角をなすものです。そう考えてくると、厳密な意味での「個」という理解はむしろ幻想なのかも知れません。個々人の境界は外部に向けにじみ出しており、その曖昧模糊たる周縁部が(つながっているという厳然たる事実を通じて)個人的特質といわれるものを発揮させているといえないでしょうか。

これはけっして組織に依存するのではありません。むしろ組織を利用して最大限に自己を表現すると考えることが適切な処し方です。