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選択というバランス感覚に正解はない

一挙両得か、二者択一か。前者であればそのまま突き進めばいいだけですが、後者であればいずれを優先させるかという選択が要請されます。よくwin-winの関係などと言いますが、それは理想形であって、現実には何を、どれだけ妥協できるかといった駆け引きが求められます。

だからといって、相手を出し抜けばいいという安直な発想ではなく、仮に二律背反な事象であっても、どうやってお互いが満足できる水準に落とし込めるかが腕の見せ所と言っていいでしょう。

「リーダーの仕事とは、ジレンマをmanageする事だ」といってもいいでしょう。実は、「management」とは元々ラテン語で「手」を意味する 「manus」とイタリア語で「馬を調教する」と意味する「maneggiare」を起源とするそうです。馬に乗るというイメージ(私を含めあまり乗った 事のない人にも)、様々な、ときには相反するような状況に対処する事が求められるという本質をよりビビッドに理解できるように思います ビジョンと現実のジレンマにどう立ち向かうか ロジカル・インクリメンタリズム(さじ加減)のすすめ 日経ビジネスオンライン

時代的に、共感や共有、共創といった概念がもてはやされ、シェア経済やフラット化といった究極的なバランス状態が賛美されることが多いですが、そのような結果は時流から自ずと達成されるわけではありません。

むしろそうした状況を一つの着地点として追及していく、試行錯誤を含めた山あり谷ありのプロセスにこそ焦点があてられるべきです。

そもそもバランスという捉え方自体、今一度見直してみる必要があります。

上記のような「究極のバランス状態」という表現は、誤解されやすい言い回しかもしれません。なぜなら、バランスというのは、その都度調整を繰り返していく、留まることのない継続的なプロセスであるはずだからです。

それをあたかも究極の答えであるかのような落とし所として表現してしまうと、いったん達成さえすればそれで完結するかのような印象を与えます。それは一瞬のバランス状態ではあっても、その後を担保するものではないことに留意する必要があります。

このように、意思決定という問題は、断片に切り分けられるものではなく、継続的に積み重ねていくプロセスの集合体だということです。時折、印象的なジャッジメントを指して、良い意思決定だと評されることはあるかもしれませんが、それはターニングポイントではあっても、それだけでマネジメントを評価することはできません。

よく動的か静的かという区分けがなされますが、マネジメントは前者に分類されるものです。静止したヤジロベーというよりは、バランスを取りながら綱渡りをしていくサーカスといったイメージが近いでしょう。止まっていることに意味があるのではなく、進んでいくことが問われているのです。それが動的なバランスという意味合いです。

そう考えると、絶対値として疑いのない正解を追いかけるのではなく、状況に即してより好ましい選択を適宜行っていく、相対的な目線が要求されているとも言い換えられます。