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ガバナンスとは一方向なものではない

経営を語る際に、政治の問題を無視することはできません。政治や統治というと、どうしても上から下へという一方的な力関係が強くイメージされますが、もっと平たく、人間や組織が入り乱れ、互いに影響しあう力学と捉えるほうがいいかもしれません。

ガバナンスという言葉を使うことにより、統治に関わる複雑なプロセスや相互作用に注意を向けさせるという効果をもつ。ガバナンスは、より具体的に、 ネットワークの内部で複数のステークホルダーが互いに協力し合うという、複合的で複数の管轄権を有する新しい統治プロセスの台頭を指すこともある。つま り、世界で最近起こっている変化を描写しているのである。 「ガバメント」という言葉は、統一国家の下にある均一の道徳的、経験的信念との相性が一番良いのに対し、「ガバナンス」という言葉は、単一ではない道徳的、経験的ヴィジョンを喚起させる。 ガバナンスとは何か マーク・べビア著

影響力を行使する側、行使される側が一意に決まっているほうが、確かに管理という面では都合がいいかもしれません。しかし、現代の社会環境に照らして考えれば、その線引きはあいまいになってきていると言えるでしょう。これは生産者と消費者という二分が判然としなくなってきているのと同様です。 ガバナンスに着目することは、上意下達といった特定の命令ロジックを無自覚に受け入れるのではなく、多様な関わり方が選択肢として存在することを意識的に喚起してこそ意味をなします。正しいガバナンス形態を追求するというよりも、目的性に沿って適切なガバナンスを構成していくバランス感覚が問われます。