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やわらかい権力はあるか?

権力と聞くとどんな印象があるでしょうか。 それはポジティブ、それともネガティブなものでしょうか…良い悪いというのは極論で、権力に色はないという意見もあるかもしれません。また、力を行使する側に立つか、逆に行使される側に立つかでもまた、印象は180度異なるものでしょう。

仮に権力を受ける側に立った場合、権力がわれわれに何かを強いるのか、それともわれわれも当事者として権力の一端を構成するのか、この二つの認識には厳然たる隔たりがあります。

平たく言い換えるなら、われわれは権力に単に使われるのか、それとも積極的に権力と親しむのかという違いかもしれません。後者に違和感があるとするならば、権力という中に一種の諦観を見ているからといえるでしょう。

共同的権力(power-with)と支配的権力(power-over) 権力といえば、ふつう支配的な権力のことを意味する、すなわち、ある者ないしグループが他の者ないしグループを支配する権力を意味するが、共同的な権力、つまり共同してつくり出した権力、協力的な権力で強制的でない権力の概念を発展させることが可能のように私には思える。 権力は移譲され得るとは、私は考えない。なぜなら、真の権力とは能力(capacity)である、と信じるからである。 組織行動の原理 動態的管理 M・P・フォレット

フォレットは権力が生み出すヒエラルキーといったものを無自覚にあたり前とはしていないため、上記のような捉え方が出てくるのだと思います。

権力を使いこなすということは、誰彼に命令することだとは捉えられていません。もし権力が無条件に上下関係を想起させるならば、それは非常に原始的な権力の構図です。 フォレットの言う共同的権力が示唆している権力のあり様は、単なる「行使」とは切り離された考え方です。むしろ権力とは触媒であり、他者との折衝を促進する共通の舞台とみなされます。

このように読み替えてはじめて、権力がわれわれとの間に親和的(肯定的)なニュアンスをまとうことができるのです。権力の機能を100%引き出すには、力でねじ伏せるというよりも、ポジティブな関与を促すほうがより効果的といえるでしょう。