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組織能としてのケイパビリティ

ケイパビリティの位置づけについては、いろいろな解釈があると思います。単純な語義としては「能力」ということでしょうが、マネジメントにおいては組織と密接にかかわる表現です。組織能と言い換えてもいいかもしれません。

組織に自ずと備わっているものというよりも、組織を通じて具現していく、実践力であり、具体化の能力と理解できます。

研究者によっては、経営資源とは企業の財務・物的・人的・組織資本の属性をすべて包含するが、ケイパビリティは企業が経営資源を組み合わせたり活用したりすることを可能にする企業属性のみを意味するという。なお、コア・コンピタンス、広く一般の用法を見る限りでは、経営者が企業の多角化戦略を構築したり実行したりする場合に限定されているようである。 企業戦略論 競争優位の構築と持続 ジェイ・B・バーニー著

できるかできないか、それは自明とは限りません。もちろん無責任に可能性に賭けることはできませんが、将来に向けた余地として、やり方によって伸長できる領域は必ず存在します。むしろ現状で確定できるすでに固定化され、計量できる能力以上に、伸びしろを含む伸縮自在なプールを確保し、またそれを活性させることがケイパビリティの真価です。

思索や行動の自由度は個人では限られますが、人数が増えるにつれ、組み合わせによる自由度は格段に向上します。同時に反作用として、他者の干渉によって個人の自由度が制約されることもまた起こりうることです。

このように、ケイパビリティの源泉は組織にありますが、それは相乗的にも相殺的にも働きうるものです。資源を効率的に運用するといえば聞こえはいいですが、最適化には集約最適と拡張最適のふたつの志向性が存在します。これらは真逆のアプローチでもあります。

自然の力学に任せるならば、具現しやすいという意味で「集約」への圧力を受けやすいものです。一方、「拡張」側に振るためには、この圧力に抗するだけの強い意思を必要とします。このように整理してくると、ケイパビリティが効いているかどうかの判断の一つには、現状延長への適切な懐疑というものが位置付けられます。